「子どもは褒めて伸ばそう!」というアドバイスを目にする機会は多いですが、実際には褒めてばかりではいられません。
子どもが悪いことをしたときには、親として叱らなくてはいけません。
しかし子どもを怒りすぎるのはよくないとも言われる中、どのように子どもを叱ったらいいのか、どのようにしつけをしたらいいのか迷うことはありませんか?
文部科学省が委託した行った調査「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」においても、家庭教育において知りたい内容として「子どものほめ方・叱り方」と答えた親は48.2%と、半数以上という結果が出ています。
家庭教育について知りたい情報は、「子どものほめ方・叱り方」が48.2%で最も高く、次いで「子どものしつけ」が46.8%、「子どもの健康・発達に関すること」が44.5%である。
引用元:文部科学省 平成28年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究~家庭教育支援の充実のための実態等把握調査研究~」
その次に多いのが「子どものしつけ」についてですので、多くの人が子どもへのしつけに悩んでいることが分かりますね。
子どものしつけのために、どのように叱ったらいいのでしょうか。
今回は子どもの叱り方とコツについて解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
小学生の子どもを叱る際には「叱る」と「怒る」の違いを理解し、叱ることは子どもに教えることだと認識することが大切です。
また毎日叱ってばかりでいると重要なことが心に響きませんので、普段は褒めることを増やしましょう。
くどくど叱ったり、一貫性のない叱り方をしたりするのは子どものためになりません。
行動だけに着目し、なぜいけないのかを冷静に説明し、子どもにも考えさせることで、同じことを繰り返さなくなり親子関係の向上にも繋がります。
小学生の叱り方はどうしたらいい?3つのコツを解説
小学生の子を叱るにおいて、ふまえておきたいコツがあります。まずはそのコツ3つを解説していきます。
「叱る」と「怒る」の違いを理解する
子どもが何かいけないことをすると感情が高ぶってしまい、大きな声で怒鳴ってしまうという方も多いと思います。
そこでまず理解しておきたいことが「怒る」と「叱る」の違いです。
「怒る」とは不満の感情を外に出し、怒りやイライラをぶつけることです。
語源は「起こる」と同じで、感情が高まるという意味合いを持つ言葉です。
一方「叱る」とは相手によい方法を教えること、教示することです。
長崎大教育学部教授の柳田泰典氏は叱る行為について次のように述べています。
『叱る』と『怒る』の違い
叱る:相手を正しい方向へ導くために、よくない点を指摘して、何がよくないのかを気づかせること。
叱るという行為は、相手とのコミュニケーションが必要。
引用元:柳田泰典「教育課程の活性化と教師の「ほめ方―叱り方」に関する研究~キー・コンピテンシー段階における発達教育学の探求~」
「怒る」という行為はあくまでも自分が感情を爆発させるだけですが、「叱る」とは相手とのコミュニケーションの上で成り立つということです。
子どもに対して一方的に喋って強引に納得させるという状況は「叱る」とは言えず、子どもにとって好ましくないと言えます。
「叱ること」は「教えること」という認識を持つ
さきほどお話した「怒る」という言葉は、自分よりも目下の人に限らず目上の人に対しても使用されることが特徴です。
しかし「叱る」という言葉は目下の人に対して使われることが特徴です。
「叱る」という言葉には「相手をよい方向に導く」「相手に教える」という意味があるためです。
<叱り方>「叱る目的は教えること」
・大事なのは、謝罪させることでもなく、誓わせることでもない。
子どもに理解させることである。
引用元:柳田泰典「教育課程の活性化と教師の「ほめ方―叱り方」に関する研究~キー・コンピテンシー段階における発達教育学の探求~」
子どもを叱るということは、お互いに話をしながら、なぜそれがいけないのかを教えていくことです。
小学校低学年の子どもは未熟ですので、禁止されている物事に対して「なぜやってはいけないか」という理由までを自力で考えることは難しい時があります。
例えば歩きながら歯みがきをすると、転んだ時に喉に刺さる恐れがあるため大変危険ですよね。
しかし大人が「歩きながら歯を磨かないで」とだけ伝えても、子どもはなぜ危ないのかまでは理解できません。
そのためその時は言うことを聞いても、時間が経てばまた同じことを繰り返します。
そこで「細長い物を口に入れている時に転んだらどうなる?」と一緒に考えながら教える、これが「叱る」という行為です。
親は子どもを身の危険から守るために様々なことを教える、つまり「叱る」必要があるのです。
どのような言葉を使えば子どもに伝わるのかを考え、叱っている間の子どもの表情を見ながら丁寧に伝えていきましょう。
褒める9割、叱るは1割
子どもと一緒に過ごしていると様々な物事が目について気になってしまう、という方も多いでしょう。
帰宅した後に靴を揃えていない、ランドセルが置きっぱなしになっている、だらだらして勉強に取り掛からないなど、そのような光景を見ているとつい叱りたくなってしまうものですね。
しかし子どもを叱ることが日常になってしまうと、叱ることの特別感が薄れてしまい、子どもに「また叱られた」と思われてしまう原因になります。
そうすると自分や誰かの命にかかわるような極めて重要な時に叱っても、子どもに「どうせいつものことだ」思われ、軽く流されてしまう恐れがあります。
日常の中では褒めるは9割、叱るは1割でよいと提唱する方もいます。
・子どもはほめて育てる。
割合としては、「ほめる:叱る=9:1」くらい。
・よいことをしてほめられないと、子どもは悪いことをして「せめて叱られよう」とする。
引用元:柳田泰典「教育課程の活性化と教師の「ほめ方―叱り方」に関する研究~キー・コンピテンシー段階における発達教育学の探求~」
自分の子どもには優秀な子になってほしいと願うあまり、つい色々と口出ししたくなるのは当たり前のことです。
しかし「叱る」という行為は子どもを守るために重みがあることなのだと意識をするようにしましょう。
やってはいけない!小学生のダメな叱り方
よくない叱り方をしていると、親の大切な話が子どもの心に響かず、悪影響を及ぼす可能性があります。
具体例を踏まえながら、小学生にとってよくない叱り方を紹介していきます。
くどくど叱る
子どもを叱っているときに「昨日も同じこと言ったのに」と過去のことを子どもに言ってしまった経験がある方は少なくないはずです。
また朝の準備を早くするよう注意しているときに「勉強を始めるのも遅いよね」と関係がないことをつい言ってしまう、という事はないでしょうか。
叱る時は過去のことを蒸し返しがちですが、くどくどと叱ることは子どもにとって逆効果です。
言われたことが多いほど、子どもは何のことで叱られているのか分からなくなります。
また親が長い時間子どもを叱っていると、子どもは「長く叱ってて辛かった」「しつこかった」ということが印象に残り、叱られた内容については心に残りません。
叱るときは大切なポイントを端的に伝えるようにしましょう。
私たちが子どもをくどくどと叱る原因としては「前に言ったことを忘れているのではないか」という、子どもを信用していないという心理が考えられます。
確かに子どもは同じような失敗を繰り返しますが、みんなそのように成長していくものですので、子どもの成長を信用する姿勢が大切です。
人格を否定する
子どもを叱るときに「あなたは~だからこうなんだ!」と決めつけたり、誰かと比べたりなど、子どもの人格を批判するのはよくありません。
親の存在は子どもにとって絶対とも言えるものですので、親の強い言葉は子どもの心に強く残りなかなか消えません。
「そんなことしてあなたはダメな子だ」というように子どもを否定すると、子どもは「自分はダメなんだ」と思い込んでしまい、自己肯定感が低くなる恐れがあります。
例えば、「お兄ちゃんのくせにまた妹を泣かして。あんた、意地悪だね」「本当にずるい子だね」「情けない奴だなあ」「お前はウソつきだ」「卑怯な子だね」「お前はいつも口ばっかりだ」「そんなこと、お前にできるはずがない」などです。
これは、その子の人格、性格、能力などを丸ごと否定する言い方です。
こういう言い方は絶対やめてください。
言われた方は深く傷つき、トラウマになって長く引きずる可能性があります。
人の性格を表す「ずるい」「情けない」「卑怯だ」「意地悪だ」などの言葉は子どもにぶつけないようにしましょう。
後の項目でも詳しく解説をしますが、相手の性格や人格を否定するのではなく、行動だけに焦点を当てて叱るようにしてください。
一貫性がない
ある物事に対して叱る時と叱らない時があると、子どもはどうするべきなのか混乱します。
例えばお菓子を床にボロボロこぼしながら食べている時、機嫌が悪いときは叱るのに良い時はそのままにしている、ということはないでしょうか。
人間であれば機嫌の良し悪しがありますので、機嫌が悪い時は些細なことでイライラしてしまうこともあります。
しかし叱るポイントに一貫性がないと、子どもは親の顔色で物事を判断するようになる恐れがあります。
また、叱る基準は親の機嫌以外でも変わることがあります。
家では食べ残しを注意するにも関わらす外食では注意しない、というように環境で変化する、母親は9時に寝るよう注意するのに父親は夜更かしを容認している、というように人で変化するなどの例が挙げられます。
叱るポイントは、いつ誰でもどこでも同じ基準で、をできるだけ心がけましょう。
成長する!小学生の上手な叱り方
では逆に小学生の子どもにとってよい叱り方、上手な叱り方についても紹介をしていきます。
積極的に取り入れ、子どもの成長につなげていきましょう。
子どもの気持ちを確認する
子どもが何かよくないことをすると、つい一方的に叱ってしまいがちです。
しかし子どもを叱るときには、どうしてそのようにしたのか、子どもの話をちゃんと聞くようにしましょう。
低学年の子どもは言いたいことをまとめる能力が未発達な上、「自分が責められてる」と思うと黙ってしまう傾向がありますが、そこで急かさずに言葉が出てくるのを待ちましょう。
なぜなら、子どもが自分のやったことがよくないことだと認識しているかどうかで叱り方が変わるからです。
一番大切なことは、その子がしてしまったことに対するその子の認識を確認するということだ。
「いけないことをしてしまった」と感じているのか、それとも違う感じ方をしているのか。
*「いけないこと」と認識しているとしたら、さらに「それは、どうして?」と尋ねればよい。
理由が不十分であれば、教師がそれに付け加え、教える。
*「いけないこと」と認識していない場合。
教える:「相手がこういう気持ちになるから、してはいけない」「世の中のルールとして、やってはいけないことなんだよ」
引用元:柳田泰典「教育課程の活性化と教師の「ほめ方―叱り方」に関する研究~キー・コンピテンシー段階における発達教育学の探求~」
悪いことだと分かっているにも関わらずそれをやってしまった場合、何らかの理由があるはずです。
やってはいけない理由を十分に理解できていない可能性もありますので、それを訂正するために子どもの言い分をきちんと聞きましょう。
いけないことだと分かっていない場合、そのままにしておくとまた同じことを繰り返します。
何故いけないのかを子どもにも理解できるように伝えましょう。
具体的な行動を叱る
叱る際は子どもの人格を否定せず、行動について叱るように前の項目でもお話しました。
子どもを叱るときは、子どもの行動がなぜいけないことなのか、他の人や物事にどのように影響を及ぼすのかを具体的に説明しましょう。
「鬼が来るよ」「地獄行きだよ」というような抽象的な説明はよくありません。
確かに言われた時は言うことを聞くかもしれませんが、このような抽象的な脅しはいつか効果が無くなりますし、なぜ叱られているのか分からないため同じ間違いを起こします。
「みんなこうだから」というような子どもに分かりにくい一般論、感情論の押し付けも同じです。
子どもの不適切な行動によって実際にどのようなことが起きるのか、順序立てて説明すれば子どもでも理解できます。
それを積み重ねることにより、子ども自身で「これはこうなるからよくない」と客観的に善悪の判断をつけられるようになります。
今後どうするかを考える
子どもがやってしまった失敗に対して怒りが収まらず、長々と責めてしまったという経験がある方もいると思います。
しかし子どもが一度したことはもう無かったことにできません。
事あるごとに過去の失敗を蒸し返すのではなく、今後同じことがないようにどうすればいいかを子どもと一緒に考えましょう。
物事に対して「なぜ・どうして駄目なのか」を子ども自身に考えさせるのもお勧めです。
叱られる理由を知っただけでは、「わかったつもり」でも正しく理解していない可能性もあります。
それを防ぐためには、なぜ叱られたのか、何がいけなかったのかについて、子ども自身に自分の言葉で説明をしてもらうようにしましょう。
自分で言語化することで、理解度も納得度も格段に深まります。
親が時折ヒントを出しながら冷静に考えて話し合うことで、同じ失敗を繰り返さなくなるだけでなく、自分で善悪の判断も付けられるようになっていきます。
叱り方を工夫して小学生の成長を見守っていこう
親が子どもを叱らなくてはいけない状況に置かれている時というのは、どうしても感情が怒り等で高ぶっている状態ですので、その中で冷静に正しい叱り方をするというのは極めて難しいと言えます。
つまり親自身も悩みながら「叱り方」と真剣に向き合っていく必要があります。
一方的に感情で怒らず、愛情をもって子を導こうという意志のもとで叱るようにすれば、必ず気持ちは伝わります。
しかし「感情的になってはいけない」と言われ、その通りにできれば私たちも苦労はしないのです。
大人とはいえ人間ですので、感情的になることは誰にでもあります。
「言い過ぎたな」と思った時には、冷静になってからで構いませんので子どもに謝りましょう。
そうすることで謝る姿勢を子どもが見習うようになるだけでなく、より親子の信頼関係が強固になり、叱る言葉が伝わりやすくなっていくことでしょう。
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