ゲームが好きだという子どもは非常に多く、子どもがゲームばかりで勉強をしない、という悩みを抱えている方もいるでしょう。
しかしゲームは子どもの社会に深く根付いている存在です。
小学校低学年~中学年の男子で、ゲームのキャラが好きだという子は非常に多いですよね。
ゲームの所持率は非常に高く、内閣府が発表している「青少年のゲーム等の利用環境実態調査」ではなんと小学生の93.9%が何らかのゲーム機を持っていると回答しています。
なんらかのゲーム機を持っている青少年は、高校生(82.7%)は8割台前半であるが、小学生(93.9%)と中学生(93.3%)はいずれも9割を上回っている。
ここまで所持率が高く子ども社会にゲームが完全に根付いている状況ですので、ゲームを完全に排除するのは極めて難しいと言えます。
一般的に「ゲームは子どもにとって悪影響」という風潮があり、香川県が2020年3月にゲームの時間を60分にする法案を成立させたことは広く話題になりました。
ゲームはそれほどまでに悪い存在なのでしょうか?
今回はゲームが子どもの教育に与える影響と、正しい付き合い方について解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
ゲームは子どもに悪影響を与えると言われていますが、実際はゲームをやりすぎる事で生活習慣が乱れることが子どもにとって悪い影響を及ぼしています。
ゲーム自体には社会性が育つ、問題解決力が身につく、ストレスが発散できるなどのメリットがあります。
ゲームの良い面を生かすために、まずは子どもと一緒にゲーム時間のルールを作ることが大切です。
そして社会性を育てるために感情移入ができるタイプのゲームを選ぶこと、時には外で遊ぶことを心がけ、上手にゲームと付き合っていきましょう。
ゲームそのものは悪影響じゃない!
「ゲームは学力を低下させる」とよく言われていますので、ゲームそのものに何らかの影響があるという印象を抱きがちです。
実際はゲームそのものが学力に影響を与えているわけではありません。
ゲームそのものが悪影響なわけではなく、ゲームをやりすぎることにより生活習慣が乱れ、その結果学習意欲に悪い影響を与えているというのが正しい認識です。
独立行政法人経済産業研究所が発表した研究結果によると、ゲーム時間が長くなるほど家庭外の問題行動が増えたり、学校への適応度合いなどにあまりよくない影響を与えたりするという結果が出ています。
本研究の結果からは、テレビやゲームが子どもの発達にあたえる負の影響はほとんど観察されなかった。
むしろ子どもの発達に影響を与えるのは、日常の生活習慣であることが判明した。
引用元:独立行政法人経済産業研究所「テレビやゲームは子どもの発達に有害なのか―21世紀出生児縦断調査のデータを用いた検証―」
この調査においてゲームそのものは教育や発達に悪い影響を与えるとの結果は出ておらず、むしろ使い方によってはプラスになるという見解も示されています。
ゲームが子どもに与える影響についてはこれまで多くの研究者が調査を行ってきましたが、実際は直接的な悪影響は与えていないということが様々な研究結果で裏付けされています。
攻撃性、社会的不適応性、脳の健全な発育への影響などの問題を取り上げ、その研究成果を中心に論じた。
その結果、多くの心理学的研究においては、テレビゲームが青少年の犯罪、学校不適応、社会的不適応などに直接に関係しているわけではないことを示唆していることが明らかになった。
ゲームがもたらす3つの良い影響
それでは実際にゲームが子どもに与えるよい影響とはどのようなものがあるのでしょうか?
具体例を踏まえながら3つの影響について解説していきます。
- 社会性が育つ
- 問題解決能力が身につく
- ストレスの発散ができる
社会性が育つ
ゲームには様々な登場人物が出てきます。
攻略のために状況に適した選択肢を選んだり、欲しそうなものをあげたりなど、ゲーム内で相手の考えを読み取った上で状況判断をしなくてはいけない場面は非常に多いです。
RPGの味方キャラであればキャラの特性を考えた上でパーティを組んだり、体力や装備に気を配ったりする必要がありますね。
領地を広げ天下統一を目指すような戦略シミュレーションゲームでは、自分の欲だけでなく民衆の意見も聞かなくてはいけません。
ゲームを攻略するためには人物のことを考え、自分の感情や行動をコントロールしなくてはいけないのです。
跡見学園女子大の研究によると、主人公に感情移入ができるタイプのテレビゲーム、RPGやシミュレーションなどは、子どもの発達に有益な効果を与えるということも明らかになっています。
「社会的スキル」にはひとり遊び能力が様々に影響していると考えられる。
ひとり遊びの中での、主人公や遊びの流れに感情移入したり、さまざまなものに関心を持ち、取り入れようとするなど、積極的な態度が、社会的スキルの向上に繋がるということが明らかとなった。
他人のことを積極的に考えて行動に移すという姿勢がゲーム外の生活においても発揮され、社会性が育っていくことが期待できるのです。
問題解決能力が身につく
ゲームの中ではいろいろな問題が起こります。
攻略のためにはそれを解決しないといけないのですが、そのための行動は現実社会で問題解決をするときと同じです。
例えばRPGにおいて戦いに勝てない時は自分のことを鍛えなくてはいけませんし、次の行動が分からない時はゲーム内の誰かに話しかけたり、知っている場所に再訪したりしますね。
またどうしても攻略が分からない時は、同じゲームをしている友達に解決方法を聞いたり、親に「攻略方法を探して」と相談したりしますよね。
ゲームは一人の世界に留まった孤独な遊びのように思えるのですが、その先に世界が広がり、子どもにとっての社会が成り立っているのです。
自分で解決力を探したり誰かに助けを求めたりする行動は、この先の対人関係で非常に大切なことです。
ストレスの発散ができる
子どもがゲームに夢中になる理由の一つに、ゲームで得られる爽快感があります。
昔より子どもが外で遊ぶ機会が減っている事は以前より言われていますが、最近は友達と集まって遊ぶ機会も減っているのではないかと思います。
小学生の精神はまだ未熟ですが子どもなりにストレスはありますので、それを発散するための手段は生活に不可欠です。
ゲームで一定の満足感を得ることは子どもにとってよいストレス発散になります。
対戦ゲームなどは負けることでイライラしてしまい、余計にストレスを溜める恐れがありますのでお勧めはできませんが、ゲーム内容を選んだり、親子で一緒にできるゲームをやることで楽しくストレス発散をすることができます。
良い影響を受けるためのゲームとの付き合い方
ゲームから良い影響を受けるためには付き合い方が重要です。
ゲーム自体には直接的な悪影響はありませんが、付き合い方を間違えると生活習慣に悪影響を及ぼします。
よい影響を受けるための良い付き合い方を解説していきます。
共感性のあるゲームを選ぶ
ゲームはいい影響を及ぼすというお話をしましたが、どのジャンルでもいいわけではありません。
アドベンチャーやシューティングなどの攻撃性のあるゲーム、パズルゲームや音楽ゲームなどはゲーム内で誰かと接する機会がなく、現実社会でも情報交換をあまりすることがないためコミュニケーションが生まれにくいです。
先に引用をした跡見学園女子大の研究では、登場人物への共感性を必要とされる要素が強い「共感ゲーム」が子どもによい影響を与えることが分かっています。
「ひとり遊びによるポジティブ効果」では、「体操タイプのみ」よりも「共感タイプのみ」、「共感タイプ&攻撃タイプ」、「共感タイプ&体操タイプ」のほうが「ひとり遊びによるポジティブ効果」の得点が有意に高かった。
共感性を伴うテレビゲームで遊んでいる小学生は、体操的要素を含んだテレビゲームで遊んでいる小学生よりも、ひとり遊び能力やひとり遊びによるポジティブ効果が高いことが明らかとなった。
ゲームのジャンルでは具体的にRPGや育成、シミュレーションがこれに当てはまります。
社会性を育てるためにはそのようなゲームを選ぶようにしましょう。
時間を決める
ゲームを子どもにやらせる上で一番困るのが、ゲームをやりすぎて他のことがおろそかになることです。
長時間ゲームをしたり遅い時間まで起きていたりすると、子どもの生活習慣が乱れ、翌日の学校生活に悪影響をもたらします。
最悪の場合はゲーム依存となってしまう恐れもあります。
だからと言って親が一方的に時間を制限すると子どもは反発します。
生活習慣に影響を与える遊び方をせず、時間は守るという共通理解が必要ですので、一緒に子どもと話し合ってルールを決めましょう。
子どもは勉強よりもゲームが好きですので、ゲームに多くの時間を割きたがるかと思います。
しかしゲームのやりすぎがなぜ駄目なのかを話し、お互いに納得したルールを決めて上手にゲームと付き合いましょう。
外との繋がりを作る
ゲームとうまく付き合っていくには、ゲームの世界だけで完結させないことが大切です。
子どもにとっては外で思い切り遊ぶことも必要です。
だからと言ってゲームに夢中になっている子に「ゲームはだめ!外で遊んできなさい!」と無理強いをするのはお勧めできません。
小学校低学年の子どもであれば、外で遊ぶこと自体は元々好きだという子のほうが多いですので、ゲームをやる時間を別に確保すれば外で遊んでくれるはずです。
ゲームをする時間を外遊びへの時間に割り当てるのではなく、どちらの時間も大切にしましょう。
外で体を動かしたり自然に触れたりすることで、ゲームとは違った外の世界の楽しさを味わうことができます。
生活にメリハリも付きますし、ゲームの時間も自然に減っていくはずです。
外遊びの時間と無理なく折り合いをつけることで、上手にゲームと付き合っていけるようになります。
ルールを守ればゲームは良い影響を与えてくれる!
ゲームは子どもにとって決して悪影響なものではありません。
むしろルールを守って付き合えば、悪影響どころかよい影響を与えてくれる存在です。
親が心がけたいことは、ゲームについて一緒にルールを作ること、また安全にゲームができる環境を作ることです。
ゲームは付き合い方を一歩間違えると、子どもにとって非常に悪い影響を与える存在になってしまいます。
子どもにはまだ判断や自制ができませんので、親が見守ってあげましょう。
そして親が一緒にゲームをやることも、子どもが好きなものを理解するきっかけになり、親子のよいコミュニケーションになりますのでお勧めです。
親子で上手にゲームと付き合っていきたいものですね。
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