参観など子どもが多く集まる場で、自分の子どもが引っ込み思案な態度であるのを目撃し、不安になった事はないでしょうか。
恥ずかしがり屋の子どもは人の前で積極的に話そうとしませんし、何かを話そうとすると言葉にするまでに時間がかかりますね。
文部科学省の幼稚園教育要領では、言葉や表現力を高めようとする取り組みが記載されてはいますが、どの項目でも「楽しむ」「喜ぶ」ということが前提となっています。
そのため本人が楽しくなければ、無理に取り組むことではないと言えます。
(1)言葉は、身近な人に親しみをもって接し、自分の感情や意志などを伝え、それに相手が応答し、その言葉を聞くことを通して次第に獲得されていくものであることを考慮して、幼児が教師や他の幼児とかかわることにより心を動かすような体験をし、言葉を交わす喜びを味わえるようにすること。(中略)
(4)幼児が日常生活の中で、文字などを使いながら思ったことや考えたことを伝える喜びや楽しさを味わい、文字に対する興味や関心をもつようにすること。
引用元:文部科学省「幼稚園教育要領」
ただ引っ込み思案であることで本人が辛い思いをしないか、将来困らないか等、色々と心配になる方も多いはずです。
しかし恥ずかしがり屋であることは短所ではありません。
恥ずかしがり屋の子どもが個性を生かして無理なく成長するために、恥ずかしがり屋の子の個性や魅力を理解しましょう。
このページの要点をざっくりいうと
恥ずかしがり屋な性格は短所ではありません。
歳を重ねてもずっと変わらないわけではなく、一過性であることが多いです。
また著名人で内向的な人も多く存在しますので、引っ込み思案だからといって心配しすぎる必要はありません。
むしろ親の心配が子に伝わることで、子が自分に自信が持てなくなる恐れがあります。
子の性格を個性として受け入れること、その子のタイミングを待つこと、そして家で安心できる場所を確保することを心がけ、性格の発育を見守りましょう。
恥ずかしがり屋はよくないことなの?
子どもが恥ずかしがり屋だと、親としては「損はしていないか」「辛い思いはしていないか」と不安になりますね。
恥ずかしがり屋は性格の一部ですので、克服しようと躍起になる必要はありません。
また子どもの引っ込み思案な性格は実は一過性であることがほとんどです。
『ドラゴン桜』の監修や『「叱らない」しつけ』などの著書で有名な教育評論家の親野智可等氏は、子どもはオリジナルペースで成長していき、小学生の時に引っ込み思案でも成長して変わる例は数えきれないほどあると述べています。
その子自身に備わっている成長のペースを大切にしてやってください。
6歳の時引っ込み思案でも、16歳、26歳、36歳、46歳、56歳……とずっと引っ込み思案とは限りません。
これから、小学校、中学校、高校と進んでいくなかで、子どもはどんどん変化し成長していきます。
心理学研究の研究報告「Child Social Preference Scale」でも、引っ込み思案な性格(シャイネス)は年齢とともに低下するという結果が報告されています。
シャイネスについては、学年を通じて男子よりも女子の方が高かったが、男女のいずれにおいても学年が上がるにつれて低下していく傾向がみられた。
年齢が上がるとともに自己の行動や感情をコントロールする能力が高まるにつれて、接近と回避の葛藤をうまく処理できるようになるため、行動面にシャイネスが表れにくくなるものと考えられる。
小学校低学年でもハキハキと物怖じせずに話す子もいますので、そのような子とつい比較してしまう、という方もいるでしょう。
しかし親が「恥ずかしがり屋=短所」と意識していると、子どもも同じように自分の性格がよくないと思い始め、自信をなくします。
どんな自分でも愛されているという実感が子どもの成長を支援していきますので、親が子どもの性格を受け入れてあげましょう。
恥ずかしがり屋の3つの魅力
「恥ずかしがり屋」という性格はデメリットとして捉えられやすいですが、長所として考えることもできます。
その魅力3つについて詳しく紹介していきます。
- 物事に対してよく考えられる
- 言葉を選んで発言できる
- 自分のおこないを分析・改善できる
物事に対してよく考えられる
「恥ずかしい」という気持ちは一人でいる時には生まれず、周りに人がいるからこそ生まれる感情です。
恥ずかしがる子どもは、周りがどのような環境なのか、自分がどんな状況に置かれているのかを考えられるからこそ「恥ずかしい」という気持ちになっています。
つまり恥ずかしがり屋の子どもは状況把握力が優れているということです。
状況把握力とは、周囲の人や物事と自分の関係を理解する力のこと。
「状況把握力」とは、周囲の人々や物事と自分との関係性を理解する力です。
組織の中では「自分のできることをする」という姿勢が求められます。
そのためには、「自分は何ができるのか」を理解していなければなりません。
状況把握力は組織の中で働く上で非常に重要視されています。
周りの状況を把握してその中で自分ができることを理解し、組織にとって最大限のパフォーマンスをする力は、将来大いに役に立つ能力です。
言葉を選んで発言できる
子どもは思ったことをすぐ口にしてしまうことが多いです。
素直さは子どもの魅力ではありますが、大人同士では絶対に言わないようなデリケートな事を指摘することもあり、本人が自覚しないうちに他人を傷付けていることも決して珍しくありません。
いくら本人に悪気がなかったとしても、歯に衣着せぬ発言が火種となってトラブルが起きたり、ケンカになったりすることもあります。
しかし引っ込み思案の子どもは発言をするまでに間を置き、言葉を選ぶことができます。
引っ込み思案の子は話すスピードがそれほど早くはなく、文章量もさほど多くはないはずです。
「これは言わないほうがいい」と思うことを言わず、話す内容を取捨選択することができるということですので、結果として相手に対して思慮深い対応ができます。
人間関係を円滑に進めることができ、集団生活の輪を乱すこともありません。
自分のおこないを分析・改善できる
恥ずかしがり屋の子どもは他人に無関心なわけではありません。
先に引用した心理学研究の論文では、引っ込み思案な性格(シャイネス)と社会的無関心の関係性について調査を行っていますが、シャイネスが高い子は他者に無関心なわけではない、という事が明らかになっています。
シャイネスの高い子どもは、他者と関わりたい気持ちをもちながらもそうすることができないために内面で葛藤を生じ、情緒的な問題を生じていると考えられる。
本当であれば積極的に発言をして思っていることを素早く伝えたいと思ってはいるのですが、それができずもどかしい思いをしているという事です。
しかしもどかしい思いをすることで「あの時どうすればよかったか」「なぜうまく話せなかったか」と内省する機会を得ることができ、幼いうちから「自分の行動や言動を振り返る」ということを覚えられます。
そうすることで自分と他人の違いに目を向けて視野を広げ、自分自身を高めることができるようになります。
恥ずかしがり屋な子どもに親がするべき対応
恥ずかしがり屋な性格は年齢とともに変化するものです。
ではその成長を見守る上で、親はどのように接すればいいのでしょう。
ひとつの個性として受け入れる
親自身が子どもを心配すると、子どもも恥ずかしがり屋な性格が悪いことだと考えてしまい、自分はダメな人間だと思ってしまう恐れがあります。
同級生でハキハキと喋るお友達を見ていると「うちの子は恥ずかしがり屋で…」とつい愚痴を言ってしまいたくなることもあると思います。
しかし子どもは親が話していることを案外聞いていて「自分について文句を言っている」と察してしまうものです。
保護者の言葉は、お子さまに大きく影響しますので、恥ずかしがり屋で困るという先入観を植え付けるような発言は避け、「大丈夫」と、人前に出る場面でも前向きな発言を心がけましょう。
恥ずかしがり屋という性格はひとつの個性ですので、できるだけ前向きに受け止めておおらかに対応していきましょう。
どうしても引っ込み思案な性格だと不安、という方は内向型の著名人を調べてみるのもよいでしょう。
- ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)
- ステーブ・ジョブズ(Apple創業者)
- ラリー・ページ(google創業者)
- マーク・ザッカーバーグ(Facebook創業者)
など、内向型の性格で有名な成功者は実はかなり多いのです。
引っ込み思案なことは決してハンデにはなりません。
その子のタイミングを待つ
恥ずかしがり屋な子どもが他人の前で話すとき、なかなか言葉を発しないのを見て、親が先回りして話をしたり、ついつい急かしたりすることがあるかもしれません。
恥ずかしがり屋な子の長所の一つは「言葉を選んで話せること」です。
子どもが自分で話す機会を奪ってしまうと、その長所を生かすことができないばかりか、子どもが話す楽しさを経験する機会も奪うことになります。
親が代弁すると、子どもは余計に何も言えなくなります。
引っ込み思案な子でも社会に無関心なわけではなりませんので、言いたいことがあるはずですが、それを押し殺させることで主体性を奪うことにもなりかねません。
できるだけ急かさず、先回りして口出しをせず、自分の言葉で話してもらうことを心がけましょう。
家庭での居場所を確保する
恥ずかしがり屋の子はいつも場の雰囲気にあわせて自分を抑えたり、自分の意見を伝えようと一生懸命考えたりしていますので、恥ずかしがり屋でない子に比べると外で神経を張りつめている状態です。
そのような子は安心できる場所があると情緒が安定しやすくなります。
引っ込み思案な子でも親の前では素を出すことができ、リラックスできますので、家庭を子どもにとって安心できる場所にすることが大切です。
自分は子どもの味方であることを伝え、子どもが学校で辛かったこと、我慢したことなどを話してきたらじっくりと聞いてあげましょう。
「頑張らなくてもちゃんと居場所がある」という環境があることで、自分らしさを徐々に確立することができます。
恥ずかしがり屋は個性!その子の良さを伸ばそう
恥ずかしがり屋な性格は社会的に恥ずかしいこと、劣っていることでは絶対にありません。
短所ではなく個性の一つですので、性格を直そうと対策を取るのではなく、子どもが実際に人前でどう感じていて、どのように物事を見ているのかに興味を持ちましょう。
恥ずかしがるということは、決して悪いことではありません。新しいことや人とのコミュニケーションに対して慎重なだけです。
お子さまのそんな気持ちに寄り添い、しっかり見極めているのだととらえ、保護者からはポジティブな提案を心がけてみましょう。
恥ずかしがり屋の子どもは周りの空気を読み、状況に合わせて行動ができる子です。
だからこそ人前で自分をうまく表現できないこともありますので、親はそのような子の悩みに寄り添い、負担を軽減できるようプラスに導いていきましょう。
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