読解力は国語だけでなく他の科目でも必要不可欠な、非常に重要な力です。
読解力というと「文章を読み取る力」と考える方も多いと思いますが、それだけが読解力ではありません。
文部科学省が提示しているPISA調査では、読解力を以下のように定義しています。
自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと。
世界の中でも日本人は読解力があるほうだとされていましたが、学校でICT教育(情報通信技術)が遅れていることもあり、PISA2018での読解力の成績は過去最低の15位に低下。
様々な専門家が読解力の低下に警鐘を鳴らしています。
では家庭で読解力を伸ばすには、一体どのようなことをすればいいのでしょう。
読解力を伸ばすための方法について詳しく解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
読解力ってそんなに大事なの?
国語だけじゃなく、他の科目にも影響が
あるし、将来のためにも必要不可欠だよ
読解力は国語だけでなく他の科目にも影響を与えています。
小学校の頃に読解力を鍛えないと中学校でつまずいたり、将来AIに仕事を奪われる恐れがあります。
読解力を伸ばすためには読書をして語彙を増やすこと、要約する訓練をすること、親子で出来事などについて会話をする等が効果的です。
読解力を高めることで情報の取捨選択ができるようになり、AI社会を勝ち抜く力をつけることができます。
小学生のうちに読解力をつけないとどうなる?
まだ早い気もするんだけど…
中学校でつまづかないためにも
今から学習したほうがいいよ
読解力は年齢が上がるにつれ、重要な役目を担うようになっていく能力です。
小学生のうちに読解力をつけないと、中学校以降で成績が下がったり、将来の職に影響を及ぼす可能性があります。
中学生から成績が下がる
問題文の内容を理解できないと
勉強のしようがないからね
そもそもの話だね
中学校以降の学習ではどの科目でも問われる内容が難しくなり、問題文を正しく読解できるかどうかが鍵となります。
読解力がないと、問題の意味が理解できません。
中学校の時に読解力がついていないと、教科書の内容を理解できない恐れもあります。
国立情報学研究所が実施したリーディングスキルテストでは、教科書の文章の意味が理解できていない中学生が多いということが分かっています。
『幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。
1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。』
答えは「異なる」。中学生の57.4%、高校生の72.3%が正解した。
上記の問題は実際の社会の教科書から抜粋した文を使っています。
正解者が57.4%ということは、中学生の半分近くが教科書の内容を正しく理解できていないということになります。
教科書に書かれていることが理解できなければ当然学習内容は身に付かず、学習意欲も低下していくのです。
将来AIに仕事を取られる!?
将来的にはAI(人口頭脳)やロボットが人間の職を奪う、というニュース・記事を見たことがある方も多いでしょう。
機械はまだまだ発展の余地を残しています。
現在はルーティン業務が機械に代替されていましたが、今後は人間の脳のような人工知能を持ち、複雑で細かい作業ができる機会が出現していきます。
今以上に人間の仕事は機械に奪われていくと予想されています。
中スキルの人々の職が失われ、低スキルの職に落ちていき、低スキルの職の総量はほとんど変わらないのに、労働者の数の方が多くなって賃金が上がらず雇用が不安定になるという現象が生まれてくると予想されている。
今の子どもたちが大人になる頃には、今以上に様々な職業が機械化されているはずです。
そのため将来はAIに代替されない仕事を作っていくことが重要であり、その際に読解力を利用した思考を活かすことができます。
小学生の読解力をアップさせる3つの方法!
具体的にはどんなことをすればいいの?
読書も大事だけど、生活の中で
たくさん会話をすることも大事だよ!
それでは小学生の読解力を上げるには、具体的に何をすればいいのでしょうか。
文部科学省の『教育課程部会 教育課程企画特別部会(第26回)配付資料』によると、語彙力の強化、文章を読むプロセスに着目した学習の充実などが必要だと述べられています。
文章の構造と内容の把握、文章を基にした考えの形成など、文章を読むプロセスに着目した学習の充実(例:文章の構成や展開について記述を基に捉える学習、文章を読んで理解したことを基に自分の考えを深める学習の充実など)
上記をもとに、家庭で実践できる方法3つをまとめました。
読書をする
読書は語彙力アップに非常に効果的だ!
わからない漢字や言葉の
意味を調べさせるのもいいね!
読書をしてたくさんの文章を読むことで、語彙力を上げることができます。
読解力を身につける上で、語彙力は非常に重要です。
語彙力が多いと、その分文章の読解力も高くなるということが研究で明らかになっています。
語彙力と読解力の間に、有意で高い相関(r=.84,p〈.000i)が見られ、読解力の70、5%が譖彙力で説明されることが示唆された。
よって、「語彙力と読解力の間に有意な相関が見られる」という仮説2も支持された。
分からない漢字や言葉があったらそのままにせず、辞書をひかせたり、意味を教えたりしましょう。
低学年の子どもに黙読をさせると、分からない言葉を読み飛ばしてしまう恐れがありますので、音読をさせて読み飛ばしを防ぎましょう。
小学校1、2年生はまだ言葉をあまり知りませんので、すすんで本を読む子は少ないかもしれません。
慣れないうちは親が読み聞かせをしたり一緒に読んだりして、読書は楽しいという気持ちを持ってもらいましょう。
学年が上がったら、新聞など難しい読み物にも挑戦させてください。
要約の練習をする
読んだ本の内容を説明させること、要約させることも読解力向上に繋がります。
「誰が・いつ・どこで・何を・どうした」を意識した要約をさせ、親もそれを意識して聞くようにしてください。
最初の内はうまく要約ができず、何も言えないかもしれません。
その場合は「いつのお話なの?」「誰がそう言ったの?」「○○はどうなったの?」というように小刻みな質問で誘導しながら要約をさせていきましょう。
読んだ本に関して簡単なあらすじを書く、というのもよい訓練になります。
最初のうちは文字数に制限をつけずに書かせてみてください。
本の内容を読解し、内容を要約する力が少しずつ身についていきます。
また、読解力を高めるトレーニングとして「○○字要約」というものもあります。
文章の内容をある一定の文字数の範囲内で要約する、というものです。
学年が進んで自分であらすじをスムーズにまとめられるようになったら、文字数を決めて書かせるのもよいでしょう。
たくさん会話をする
誰が・いつ・どこで・何を・どうした
を意識して会話しよう
親も言葉に気をつけないと…
先述の文章の要約が上手にできるようになるには、普段の会話も大切です。
大人の会話には「誰が・いつ・どこで・何を・どうした」が自然に含まれているはずです。
それを子どもに聞かせてあげましょう。
子どもは私たちが思っている以上に親の言うことをよく聞いています。
大人の話を聞いて、効果的な要約の仕方はもちろんのこと、読解力を高めるために不可欠な語彙も身につけていきます。
語彙力を高めるためにも、親が「子どもの前だから簡単な言葉を使おう」と意識する必要はありません。
子どもに「○○ってどういう意味なの?」と聞かれたら、意味を教えるか辞書を引かせましょう。
そして子どもにも、学校で何があったのかを聞き、出来事を要約して伝える力を身につけさせていきましょう。
読解力をつけた小学生は将来どんな能力を発揮できる?
将来的にどんなメリットがあるの?
読解力は多方面に影響しているからね
詳しく解説していくよ!
PISA2018によると、読解力は関心・意欲、情報を読み取る能力など、学校の国語以外の事柄とも密接な関係があることが分かります。
読解力の平均得点の低下に影響を与える要因について分析したところ、生徒側(関心・意欲、自由記述の解答状況、課題文の内容に関する既存知識・経験、コンピュータ画面上での長文読解の慣れ等)、問題側(構成、テーマ、テキストの種類、翻訳の影響等)に関する事項などの様々な要因が複合的に影響している可能性があると考えられる。
上記の事を元に、読解力を身につけた小学生は将来どのような能力を発揮できるのか、読解力を身につける将来的なメリットについて解説します。
情報を正しく理解する能力
情報が溢れた社会で生きていくためにも
正しい情報を取り入られるようになろう
純粋だけじゃダメなんだね…
日本人は「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」という項目に関しては正答率が低い傾向があります。
「評価し、熟考する」能力については、2009年調査結果と比較すると、平均得点が低下。
特に、2018年調査から、「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」が定義に追加され、これらを問う問題の正答率が低かった。
この事は情報過多社会で生きていく上では大きく不利になります。
近年はインターネットやSNSが身近になり、様々な情報がリアルタイムで手に入りますが、その分虚偽の情報も溢れるようになりました。
つまり情報の真偽を読み取ることが不可欠です。
読解力が身についていれば、根拠を関連付けて情報の真偽を判断したり、多くの情報から質のよい情報を読み取ったりすることができるようになります。
新しいことを創造する能力
「小学生のうちに読解力をつけないとどうなる?」の項目でも解説をした通り、今の子どもたちが大人になる頃には、今以上に様々な職業が機械化されており、常識が今と変わっているはずです。
例えば今はスマートフォンでキャッシュレス決済を行ったり、高機能なアプリを起動したりできますが、10年前はそのようなことが出来ると予想できていたでしょうか。
現在の常識が10年前は予想できなかった事と同様、10年後の事は予想ができません。
これまでの考え方、仕事が大きく変わっている可能性もあります。
それらの情報をいち早く理解するためにはたくさんの情報を読み取ることが必要であり、そのためには読解力が不可欠です。
そして自分が何をすべきか、何の能力を伸ばすべきかを理解し、新しいことに挑戦することができるのです。
まとめ
子どもの将来に役立ちそう!
読解力はAIには真似ができないからね
しっかり身につければ武器になるはず!
読解力があるかどうかは学校の国語の成績だけでなく他の科目にも密接な関係があり、さらには将来の職業選びにも関係していきます。
AIのさらなる発達が予想される未来において、AIに真似できない読解力は職業選択において大きな武器になるはずです。
また、インターネット等にあふれる多くの情報に惑わされないためにも、読解力を駆使して文章を正しく読み取り、取捨選択していくことが非常に重要です。
小学校低学年の頃は語彙力が少ないこともあり、読解力が身についていない子が多いですが、親のサポート次第で読解力は大きく伸びます。
普段の会話を意識し、コミュニケーションを取りながら読解力を伸ばしていきましょう。
コメント