SNSやインターネットなどで「○歳で○○をやらせている」というようなやりとりを見たり、親同士の会話を通したりして「もしかして自分は過保護なのでは?」と思ったことはないでしょうか。
過保護とは、子どもを過剰に保護してしまうことです。
親としては子どもに危ない目や辛い目に遭ってほしくありませんので、子どもを心配して守ろうとするのは当然のことです。
しかしその保護の度合いが行き過ぎてしまうと、自己肯定感や自己有用感がうまく育たず、無気力、消極的な子どもになる可能性があります。
文部科学省がおこなった「日本の子どもたちの自己肯定感が低い現状について」においても、日本の子どもたちの自己肯定感や自己有用感の低さが報告されています。
諸外国と比べ、我が国の子どもたちは、学力がトップレベルであるにもかかわらず、自己に対する肯定的な評価(自己肯定感)が低い状況にある。
今回は過保護がもたらす影響や、過保護にならない育て方について解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
親が過保護だと子の自己肯定感や自己有用感が育たず、消極的な子どもになる恐れがあります。
過保護は親の傾向としては子どもの失敗を恐れる、育児に関することへの思い込みが強い、自尊感情が低いということが挙げられます。
過保護から脱却するためには子を違う個性だと認識すること、子と離れる時間をきちんと持つこと、自分自身にもっと目を向けることが大切です。
親が子と適度な距離を置き好きなことを楽しむことで、子も自己肯定感を伸ばすことができ、のびのびと育つことができます。
子どもにとって過保護は悪影響なのか
「過保護」という言葉にはどうしてもマイナスなイメージがつきまといます。
過保護は悪いと確かに言われていますが、過保護が全て悪なのかというとそのようなことはありません。
子どもの頃に親が過保護であった事と大学生になってからの自尊感情・親子関係の因果関係を調査した研究によると、子どもは親が過保護であったことを否定的にとらえておらず、「大切にされた」と肯定的に捉えている場合もあるということが分かっています。
子どもの頃に過保護であったと感じていることは、現在の親子関係にはあまり影響されないと思われる。
引用元:関西学院大学「大学生の親子関係・自尊感情・生き方志向と子ども時代の両親の養育態度との関連:過保護という養育態度の検討」
しかし上記の調査結果によると、過保護が現在の自尊感情、生き方志向にマイナスな影響を与えているということも明らかになっています。
着目したいのは過保護そのものではなく、過保護が悪い方向に働いて子どもの自立を妨げていないか?という点です。
子を過度に心配して大切にすること自体は悪くないのですが、その気持ちが子どもの成長を邪魔しているかどうかが問題なのです。
例えば子どもを悪い事柄や危険から遠ざけたいということを理由にし、親の言うことに従わせようとする態度は、子どもの自立を尊重しない態度であり、行き過ぎた過保護・悪い過保護であると言えます。
過保護な親の3つの特徴
育児に正解はありませんので、過保護かどうかについても明確な基準があるわけではありません。
しかし過保護になりやすい親の特徴には傾向がありますので、今回は過保護な親の3つの傾向について解説をしていきます。
- 子どもの失敗を恐れる
- 思い込みが強い
- 自尊感情が低い
子どもの失敗を恐れる
親としては、自分の子どもには辛い目に遭ってほしくないものですね。
失敗もいい経験になるということを頭では分かっていても、子どもが何かに失敗して挫折を味わったり、悲しんだりする姿は見たくない、という気持ちは当たり前のものだと思います。
しかし親が子どもの失敗を恐れ、先回りをして手助けをするのは過保護な親の傾向です。
このように子どもが苦労しないよう先回りをしてしまう親のことを、近年では「ヘリコプターペアレント」と呼ぶようになっています。
ヘリコプターのように、子どもの上空を飛んで、子どもの行くところどこにでもついてまわるという比喩で使われています。過度に子どもを監視続ける、親子関係のことをいうのだそう。
我が子かわいさが故に、干渉してしまうことはあります。
けれども度をこすと、子どもは常に親の意見に従い、自分で決断できなくなることもあるようです。
元々はアメリカで生まれた言葉で、就活や会社に同行する大学生や社会人の親のことを指していました。
しかし現在では年齢を問わず使われていることからも、このようなタイプの親が多いということがうかがえます。
繰り返しになりますが、子どもを気にかけることは親として当たり前のことです。
しかし干渉が過ぎると子どもの学ぶ機会を奪ってしまいます。
思い込みが強い
子どもにとって良くないとされている物があった場合、親としてはそれを自分の子から遠ざけたい、と思いますよね。
子を守ることは親の役目ですので当たり前ではあるのですが、過保護な親の場合「○○をしたら○○になる」というように一人で思い込み、子どもにそれを完全に禁止させようとします。
行動に伴う結果を、親が頭の中で考えて決めつけてしまうのです。
「ゲームをやると脳に悪いから禁止」
「炭酸ジュースは砂糖が多すぎて身体に悪いから禁止」
というように、子によくないと言われることが多いものを完全に駄目だと決めつけて禁止したり、
「あのアスレチックはケガをするかもしれないから禁止」
「友達と遊ぶのは病気になるかもしれないから禁止」
というように、十分注意をしていれば問題がなさそうなものを完全に禁止したりすることが当てはまります。
自尊感情が低い
子どもを過剰に保護しようとする根底には、親自身の自尊感情の低さがあります。
自分に自信が持てず不安な状態でいると、周囲からの子どもに対する評価が自分への評価であるかのように思えてしまい、子どもが失敗することを自分のことのように捉えてしまいます。
もちろん「子どもをのびのびと育てたい」という気持ちはあるはずなのですが、実際は上手くいかないため、さらに自信を失う悪循環に陥ることもあります。
また自分が子どもだった時に親が過保護であった場合も要注意です。
過保護な親に育てられると自分で意思決定ができないため自尊心が低くなり、その結果自分の子にも同じことを繰り返してしまう、という悪循環に陥っているのです。
子育て経験のある女性に対する調査によると、多くの母親が自分の受けた養育体験を自分の子にもしているということが分かっていますので、その観点からも自分の親が過保護であった場合は注意が必要であると言えます。
母親自身の子ども時代の経験がその子育てに反映されていた。
多くの母親は自分が受けた養育体験と同じような養育態度をとっていた。
過保護からの卒業!自立をうながす育て方
以上を読んで自分は過保護かも、と思った方は過保護からの卒業を目指しましょう。
過保護から卒業し、子どもの自立を妨げない育て方をするための方法を解説していきます。
違う個性だと認識する
子どもは未熟で知らないことばかりですので、正しい方向へ導いていくことは重要なことです。
しかしそれと同時に、子どもも大人と同じ一人の人間であることを意識していきましょう。
親にとって、子どもを大人として扱うのは難しいことです。
ベネッセが小学生~高校生を対象に実施した「子ども生活実態基本調査報告書」においても、「あなたのことを大人として扱ってくれる」と答えた人の割合は、小・中・高を通してわずが1割にしか満たないのです。
学校段階が上がっても、おとな扱いされる割合は常に1割程度にとどまり、親は中・高校生であってもまだおとなとして扱おうとはしていないことがうかがえる。
つまりほとんどの親が子を個人として扱えていないということですので、「子どもも一人の人間である」ということを意識をしていかなくてはいけません。
子どもの個性を大切にしながら、親の考えをただ一方的に押し付けるのではなく、大人対大人と同じように話をしながら意見のすり合わせをしていきましょう。
子どもと離れる時間をきちんと持つ
「過保護になってはいけない」「子を個人として扱わなくてはいけない」と心では分かっていても、いざ実際に勉強をせずにだらだらとゲームをしている子どもを目の当たりにすると、ついつい口を出したくなってしまいます。
頭では分かっていてもどうしても子どもに口出しをしてしまう、という事で悩んでいるのであれば、物理的に距離を取ることが一番です。
可能であれば一人で買い物にいったり、自分の好きなことをしたりするのもいいです。
家の中にいる場合はお互いに好きなことをする時間を作り、子どもに関わる時間を減らす工夫をすることで子どもの自立を促すことにも繋がります。
子どもを避けるというわけではなく、自分から子どもに関わりすぎる時間を減らすということを心がけてください。
自分自身にもっと目を向ける
子どもから離れる時間を持ったら、自分の好きなことについて考えてみることをお勧めします。
出産・育児とどうしても両立できない趣味というのは多いはずです。
出産をきっかけに手放した趣味があるという方も多いのではないでしょうか。
子どもに手がかかる時期は子どもが中心の生活を送っているかと思いますが、子どもが大きくなると手がかからなくなり、自分の時間が増えていきます。
進学・就職などをきっかけに、別々に暮らす日が来るかもしれません。
その時に備え、子どもが中心の日々から自分が中心になる日々に移り変わっていく訓練を今から始めてみてはどうでしょうか。
子どもがいるのに趣味を楽しむことについては最初は葛藤があると思いますが、親も一人の人間ですので、好きなことを思い切り楽しんでいいのです。
親が生き生きと好きなことをしている姿は、子の自己肯定感や自己有用感を育む手助けにもなります。
過保護を卒業して親子で人生を楽しもう
子どもを可愛いと思うあまり心配する、干渉することは親として当然の感情ではあります。
しかし「可愛い子には旅をさせよ」ということわざがあるように、子どもが大切だからこそ、いろいろなことを体験させてあげましょう。
子どもは体験から様々なことを学んで心が育っていきます。
親は危険なこと以外は子どもの意見を尊重して見守り、共感し、時には励ましたり勇気づけたりする前向きな姿勢が大切です。
子どもも親も一人の人間です。
子どもを親の所有物としてではなく一人の人間として受け入れ、意見を尊重していきましょう。
そして親自身も一人の個人として、自分自身の人生をのびのびと楽しんで下さい。
その姿を見せることで、子は親を尊敬し慕っていくことでしょう。
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