毎日仕事や家事で忙しくなかなか子どもと過ごす時間を作れない、というのは母親にとって頭を悩ます問題です。
他の家庭では、もっと時間をかけて子供と向き合っているんじゃ?と不安になっている方も多いと思いますが、実際には多くの方が育児に時間を充てることができていません。
内閣府が行った調査「子どもたちの育ちをめぐる現状等に関するデータ集」によると、一日あたりの育児時間は家事をこなす時間の2分の1となっています。
育児期にある夫婦の育児、家事及び仕事時間の各国比較
日本 育児1.9時間 家事3.8時間
時間というものは限りがあるものです。
慌ただしい毎日の中で、子どもとの時間を有効に使い、大切にするためにはどうしたらいいのでしょうか。
親が心がけたいこと、子どもとの過ごし方について解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
母親が育児に割ける時間は短く、生涯で子どもと過ごす時間も少ないことが分かっています。
だからこそ短い時間をより濃く過ごすことが大切です。
一日のうちごく短い時間でも構いませんので、子どもだけと向きあい、同じことをする時間を作ったり、愛情表現をする時間を作ることで、充実した親子の時間を過ごすことができます。
親子の愛着は情緒を安定させ自己肯定感を高めるため、親子の絆を強めるだけでなく、子どもが人生を乗り越える力となるでしょう。
生涯で子どもと過ごす時間は8年もない!
子どもとは毎日同じ家で過ごしていますので「これからも一緒に過ごす時間がたくさんある」と思ってしまいがちです。
しかし実際、幼児期を過ぎると子どもとの一緒の時間は非常に少ないことが分かっています。
2018年8月に放送されたNHKのテレビ番組『チコちゃんに叱られる!』内で、関西大学社会学部教授の保田時男氏の計算式により、『親子が生涯一緒に過ごせる時間』が割り出されました。
母親が生涯自分の子と過ごせる時間は約7年6か月しかなく、しかもこの内の7割が幼少期に終わってしまいます。
さらにそこから幼稚園入園で18%減、卒園で32%減、小学校卒業で55%減すると分かりました。
一緒に過ごす時間が長い幼児期でも、過ぎてしまった後はあっという間だったように思えるものです。
しかし学校に行き、子ども同士の時間が増えて行く学童期になると、一緒に過ごす時間はさらに減っていきます。
つまり子どもと過ごす時間は短い、ということを意識し、どのように過ごしていくかを考えていく必要があります。
子どもと過ごす時間は量より質が大切!
一緒に過ごす時間が短いからといって、焦ることは全くありません。
なぜなら人間同士が過ごす時間で大切なのは時間の長さではなく、その内容だからです。
例えば子どもと同じ空間にいたとしても、お互いに別のことをしていたのであればそれは「一緒に過ごした時間」とは言えないでしょう。
時間は10分や20分程度の短いもので構いませんので、決めた範囲内でいかに濃密な時間を過ごすかがカギです。
遠方への旅行など、大それたことをする必要はありません。
日常の些細なことを一緒にやるだけでも子どもにとってよい影響を与えます。
日本家政学会発行の学会誌によると、家族と「テレビ視聴」「お茶を飲む」「買い物」「ゲーム」「ドライブ」などのコミュニケーションを行っている子どもほど、心の健康度が高いことが分かっています。
子ども(中学生)とその親のコミュニケーション実態と子どもの「心の健康度」に及ぼす影響を調べた結果、親子のコミュニケーションに対する認知が高いほど、子どもの「心の健康度」が高くなることが明らかになった。
大切なのは、子どもと過ごす時間とどのように過ごすかを決め、それを継続することです。
子どもと過ごす時間の質を高める3つの方法
子どもと過ごす時間の質を高めるために、以下の3つの方法が効果的です。それぞれの内容について、具体的に解説をしていきます。
子どもと一緒にやれることを見つける
質の高い時間を過ごしたいからといって、特別な場所に旅行に出かけたり、大きなイベントに参加したりする必要はありません。
上の項目でも紹介をしましたが、手軽にできることを一緒にやることが大切です。
親子でできることは色々ありますが、同じ目標に向かって取り組めるものを選ぶと、お互いの心を通わせるために非常に効果的です。
一緒に宿題をしたり、ゲームをやったり、もし可能であれば同じ習い事をしてみるのもお勧めです。
話す時間は多くなくても「一緒に同じことに取り組んでいる」という事だけでも子どもにとっては特別です。
そして親がそれを楽しんでいる気持ちが子どもにも伝われば、その時間は親子だけの濃密な時間となっていくでしょう。
愛情をダイレクトに伝える
子どもの年齢が上がるにつれ、言葉で愛情をストレートに伝えることはお互いに恥ずかしくなっていくものです。
しかし子どもと過ごす時間の質を高めるためには、愛情をストレートに、かつダイレクトに伝えることが非常に効果的です。
「大好きだよ」とハグをするだけで、子どもの心は満たされます。
ハグを始めとしたスキンシップは「オキシトシン」を放出する効果もあり、心を幸福感で満たすことができますので、親子の時間の質を高めるためにはぜひ取り入れていきたいです。
タッチは動物においてオキシトシンの放出を引き起こします。
人間でも恐らく同じことが起こっているのでしょう。
オキシトシンの放出は、人と人との間、とりわけ母と子の間の感情的な絆を形成します。
(中略)こういう身体的接触によって、安心感と親密さが増します。
忙しい毎日を過ごしていると、時間に追われて慌ただしくなってしまいますが、朝起きたらハグする、寝る前にハグする、など自分の中でルールを決めて習慣化するとよいでしょう。
「今」を大切にする
親子で過ごす時間は長さより質、濃さが大切です。
子どもと過ごす時間をより充実したものにするために、子どもと過ごす時は家事や仕事など全てをシャットアウトし、子どもだけに向き合いましょう。
子どもは私たちが思っている以上に親の様子を見ていて、いつも仕事や家事で忙しそうだ、という事も感じています。
そのような中で短い時間だけでも子どもと過ごすことにより、子どもは「忙しいのに自分のために時間を使ってくれている」とわかります。
保育・子育ての専門家で、NHK Eテレ「すくすく子育て」でもママ達に様々なアドバイスを送っている井桁容子さんも、短い時間だけでも子どもと集中して向き合うことが大切だと述べています。
たとえば、1日10分、何も考えずに、ただ子どもと本気で遊ぶ。
これだけでもいいんです。
その10分は、仕事のことも家事のことも考えず、スマホもいじらず、ただ子どもと遊ぶ、または楽しいことを共有するだけ。
赤ちゃんの場合も、話しかけたり、目を合わせてやりとりをしてみてください。
この濃密な時間で、子どもは「忙しいママが自分のためだけに時間を使ってくれた!」とわかるのですよ。
子どもと過ごす今を大切にし、しっかり向きあうことで、新しい気づきも生まれます。
子どもが何が好きで何に興味を持っているのか、どのような事ができるようになったのかなど、じっくり話をすることで子どもをより深く知ることができ、親子で過ごす時間の質を向上させることに繋がりますよ。
子どもと過ごす時間が親子それぞれの人生を豊かにする
子どもと過ごす時間の質を上げることで親子の愛着関係を育むだけでなく、子どもの自己肯定感を高めることができます。
生まれて初めて接し、幼少期の長い時間をともに過ごす親との関係は、子どもにとって人間関係の土台であると言えます。
教育心理学研究の学術誌で発表された研究によると、親子との愛着関係は、友人や先生など外の人間関係を良好にするとともに、学校へ適応する能力も高めることが分かっています。
全体的に、親への愛着の良好さも教師・友人との関係への満足感もともに、中学生の学校適応感に正の影響を及ぼしていることが示唆された。
親子との関係は子どもの人生を乗り越える力も与えてくれるのです。
また、親にとって子どもと向き合う時間は親としての成長の時間です。
子どもが安心して日々を過ごしている姿を見る充実感は、何事にも代えがたい幸せではないでしょうか。
どうすれば親子で楽しい時間を過ごせるのかを考えながら、子どもとの濃密な時間を一緒に過ごしてみてください。
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