私たちが普段何気なく子どもに投げかけている言葉は、大人にとっては些細な一言かもしれません。
しかし親の存在を拠り所にしている子どもにとっては大きな影響を与えることがあります。
例えばお茶の水女子大の内田伸子先生は、家庭での親子の関係づくりをする上で命令や禁止、勝ち負けの言葉を使うのは良くないとお話しています。
例えば、お子さんが言いつけを守らないで失敗したときに、
「ほら、ママの言った通りでしょ。ママの言うとおりにしないから失敗するのよ」
という会話をよく聞きますが、子どもに勝ってどうするのでしょう。
勝ち負けの言葉は使わないでください。
また、裁判官のように禁止や命令をトップダウンでくださない。
提案の形で、「○○したらどうかしら」というように言葉をかけましょう。
親は子どもにとっての安全基地であり「いつでも助けてもらえる」という安心感があるからこそ、子どもはのびのびと育ちます。
また子どもが自分で考えられるような言葉かけをすることで、自ら判断する力や考える力、想像する力を育てることができます。
そのために子どもに言ってはいけない言葉について、実例を踏まえながら紹介し、対処法についても解説していきます。
このページの要点をざっくりいうと
子どもに対して言ってはいけない言葉には、「もう知らない!」「なんでできないの?」という子どもの人格や存在を否定する言葉、「ちゃんとして」「早く〇〇しなさい!」という大人の意図が伝わりにくい言葉、「あとでね」「まだできないよ(無理だよ)」という子どもの好奇心ややる気を削ぐ言葉などが挙げられます。
子どもを受容するという気持ちを持ち、親自身も心に余裕を持つことで、言葉の言い回しも自然に変わっていきます。
子どもに言ってはいけない言葉とは?10の実例と対処法を紹介
普段の生活でついつい言いがちな、子どもに言ってはいけない言葉を紹介します。
該当する言葉を言いたくなってしまった際の対処法についても解説していきます。
「もう知らない!」
子どもが親の言うことを聞かない時、頑固に自分の主張を押し通す時などについ言ってしまいがちな「もう知らない!」という言葉。
「勝手にしなさい」「もういい」なども、同じ状況で使われることが多いです。
大人は子どもに「もう知らない!」と感情的に言う事で、子どもが慌てて反省してくれることを期待しているのかもしれません。
しかし子どもは大人のように言葉の裏に隠れた意味を読み取ることはできず、言葉をそのままの意味で受け取ります。
つまり「もう知らない」と言われた子どもは、自分が親に突き放された、存在を否定されたと感じてしまうのです。
「もう知らない」という言葉は大人が感情を子どもにぶつけているに過ぎないこと、言われた子どもは深く傷つくことを理解し、言ってしまいそうになった時は一回深呼吸をして落ち着くようにしましょう。
子どもが悪いことをした時、言うことを聞かず我を通そうとする時は、なぜそれがよくないことなのか、理由を毅然とした態度で伝えましょう。
「早く〇〇しなさい!」
朝の忙しい時間帯にも関わらず、子どもがマイペースにご飯を食べたり着替えをしたりしている様を見ると、ついイライラして「早く○○しなさい!」と言ってしまいます。
しかし日常的に「早く」という言葉を使っていると、子どもはそう言われるのが当たり前になり、聞き流すようになる恐れがあります。
「早く○○しなさい!」と言うのではなく、何時までに何をしないといけないのか、そうしないとどうなるのかを具体的に伝えるようにしましょう。
子どもは時間の見通しを立てる能力が未熟ですので、今急がないとどうなるのかを自分で想像することができません。
そのため大人が見通しを立てる助けをしてあげましょう。
「7時30分に家を出るから、20分までにご飯を食べ終わろうね」と具体的に時間を伝えたり、「着替えないと学校に遅刻するよ」と急がないといけない理由を伝えると効果的。
また「早く」と急かすと焦る子もいますので、「歯を磨いて」というように次の行動を具体的に示すのもよいでしょう。
性格がのんびりな子の場合は前日に準備をしておくのもおすすめです。
準備をする目的やメリットを伝えておくと習慣化しやすくなります。
「あとでね」
忙しい時に子どもから声をかけられると、どうしても「あとでね」「ちょっと待ってね」と言ってしまいがちです。
子どもが大人に投げかけてくるお話や用事は時間がかかるものが多いですので、後回しにしてしまうのは仕方がありません。
しかし子どもがなぜ声をかけてきたのか、後でフォローはできているでしょうか。
出勤前などの特に慌ただしい時間帯だった場合は「あとでね」とあしらい、気が付けばそのままにしてしまった、ということもあるかもしれません。
子どもが親に「聞いて聞いて」というように話しかけてくる時は、子どもの心が大きく動いている時です。
親がそれを聞いてくれなかった場合、子どもは「親は自分の話を聞いてくれない」と思い自己肯定感を下げてしまう恐れがあります。
また「あとでねって言ったのに約束を守ってくれなかった」と親に対する不信感を募らせる原因にもなります。
もちろんその場で子どもの話を聞くことが理想ではあるのですが、難しい時は必ずフォローを入れて子どもの話を聞いてあげましょう。
「もうお姉ちゃん(お兄ちゃん)でしょ?」
「もうお姉ちゃん(お兄ちゃん)でしょ?」という言葉は、下の妹弟や年下の子に何かを譲らなくてはいけない時につい口にしてしまいがちです。
言われた側はしっかりしなくてはと自分に言い聞かせ、ストレスをため込むようになります。
我慢強いことは良い事とされるかもしれませんが、親の前で感情を抑圧し過ぎると、精神的に負担が大きくなり健全な心が育ちにくくなります。
その結果ごく一部ではありますが、家庭内暴力などの非行に繋がる恐れもあります。
東京学芸大学の調査によると、母親にストレスを受け入れてもらえなかった子は怒りの制御が困難になりやすいという結果が出ています。
負情動身体感覚否定経験認識から、自己存在感の希薄さおよび攻撃の置き換え傾向を介して、家庭内暴力傾向に影響を与えるという結果が得られ、母から負情動身体感覚を否定されてきたという認識によって、怒り感情の制御が困難となり、その状態において攻撃が置き換えられると、家庭内暴力という過覚醒反応の行動につながる可能性が示唆された。
そもそも子どもは好きで兄姉になったわけではないので「お兄ちゃんだから」という理由は子どもにとって理不尽です。
どうしても我慢させなくてはいけない場合は「お兄ちゃんだから」という理由ではなく、なぜそうしなくてはいけないのかを説明するようにしましょう。
「なんでできないの?」
子どもが何かをできずにいる時、成果を出せない時に「なんでできないの?」「こんなのもダメなの?」というように否定的な言葉を言ってしまうことはありませんか。
子どもが何かできない事で親がモヤモヤしている場合、その原因は親本人にあることが多いです。
例えば自分が子どもの時はできていた事、まわりの子ができている事に対し、自分の子どもができていないという理由で焦ってはいないでしょうか。
「私なら昔は○点とれたのに」等とつい考えてしまうこともあるかもしれませんが、親は子とは違う存在であることを理解し、自分にとっての当たり前を子どもに押し付けないようにしましょう。
「なんでできないの?」という言う前にプラスの言葉で伝える、取り掛かりのハードルを下げるなど、子どもの負担にならない声かけを心がけてみましょう。
●プラスイメージの言葉で伝える
「早く宿題やらなきゃダメでしょ」→「今のうちに宿題やっておくとあとが楽だよ」
前向きにイメージできるので、やってみようという気持ちになりやすいです。
- 取りかかりのハードルを下げて促す
「手伝ってあげるからやってみよう」「ママと一緒にやろう」「1問だけやってみよう」
何事も取り掛かってしまえば、けっこうできるものなので、ハードルを下げる言葉を工夫します。
「もう何回目だと思ってるの?」
何回も勉強しろと言っているにも関わらず勉強をしない時、つい「もう何回目だと思ってるの?」もしくは「さんざん言ってるんだけど」等とこぼしてしまうことはありませんか。
これは何回言っても子どもがいう事を聞かない原因を探る必要があります。
子どもが同じことを何回も繰り返す理由としては、以下のことが考えられます。
- 親の小言によって好きな時間を確保できる場合
- 怒らせてでも注意を自分に向けたい場合
- 本人が納得していない場合
勉強をしたくない子にとって親の小言は耳が痛くなるものですが、ゲームやテレビなどの楽しいものがある場合、「小言を言われてもいいからゲームをやりたい」とそちらを優先します。
また子どもは自分に注目してもらいたい時にも言うことを聞きません。
普段の生活で子どもを気にかける時間を増やし、スキンシップを取ることで子どもは親の愛情を正しく受け取れるようになります。
最後に、親の言うことに納得していない場合です。
子ども自身が納得していないようだったり、何回言っても何も変化がないようであれば、伝え方を変えてみましょう。
「ちゃんとして」
子どもの忘れ物が多い時やだらしないと感じる時、公共の場で不適切な態度を取っている時などについ言ってしまいがちな「ちゃんとして」という言葉。
「ちゃんとして」という言葉は子どもにとってあまりにも漠然していますので、言われても子どもは具体的にどうすればいいのか分かりません。
そのためどうしてほしいのかを分かりやすく伝えると効果的です。
忘れ物が多く困っているのであれば「前の日に準備をして確認しようね」というように忘れ物が少なくなるような提案を、だらしないと感じた時は「ハンカチは畳んでポケットに入れようね」「えんぴつは筆箱に入れてね」というように、具体的にどうしてほしいのかを伝えるようにしましょう。
公共の場で静かにしないなど、ルールを守らない時も同様です。
個人差はありますが、低学年のうちは「周囲の空気を読む」ということができない子は多いです。
子どもが周囲の雰囲気に合わせてくれる事を期待するのではなく、どのようなルールがあるのかを説明し、子どもにどうしてほしいのかを具体的に伝えましょう。
「おりこうさん」
「おりこうさん」という言葉は、子どもが低学年のうちはつい褒め言葉として言ってしまいがちです。
どのような時に子どもに「おりこうさん」と伝えているか、思い返してみましょう。
自分に都合のいい行動や、世間的に褒められる言動について使ってしまいがちですので、使いすぎには注意が必要です。
多用すると子どもは親や周囲に褒められるように顔色をうかがうようになります。
ただ「おりこうさん」という言葉自体が悪いというわけではありません。
恵泉女学園大学学長の大日向雅美先生は、NHKのすくすく子育てでの質問に対するアドバイスに以下のように答えています。
(「ありがとう。おりこうさんですね。」という褒め方に対し)
「ありがとう。おりこうさんだね。」という言葉で、片づけてくれてうれしい、助かったというママの自然な気持ちを伝えているため、まったく問題ないと思います。
○○という言葉や単語を使ったらダメということはなく、ほめるときに使う言葉の意味を深く考えなくても大丈夫です。
「おりこうさん」で済ませるのではなく、親の気持ちを伝えることに重きを置くようにしましょう。
何をしてもらえて嬉しかったのか「ママは~~がうれしかった」と自分を主語にして話すようにすると伝えやすいです。
「〇〇したら〇〇してもいいよ」
「100点をとったら、ゲームを買ってあげてもいいよ」「注射ができたらアイス買ってあげる」というように条件つきで物事を許可する言い方は、普段の生活でついつい口にしてしまいがちです。
具体的な物品を提示することにより、確かに子どもはやる気になるかもしれません。
しかしこの事に慣れると、物や金品などがないと動かない人間になってしまう可能性があります。
また提示した条件ができなければ「ダメ」ということになるため、条件を満たせなかった子どもは自分が否定されたような気分になり、自己肯定感を下げる原因となります。
物品で子どもをコントロールしようとするのではなく、相手にしてほしいこと、してほしくないことをきちんと伝えることを心がけましょう。
「まだできないよ(無理だよ)」
子どもは好奇心が旺盛ですので、様々なことに挑戦しようとします。
しかし子どもが「これをやりたい」と言ってきた時に親自身に余裕がないと、つい「無理だよ」「まだできないよ」と言ってしまいがちです。
子どもに新しいことを挑戦させる事は時間と手間がかかり、自分でやったほうが何倍も早いですので、忙しい時は仕方がないことでもあります。
しかし子どもが「やりたい!」と言ったことを何回も諦めさせていると、子どものやる気の芽を摘んでしまい、消極的な子になる恐れがあります。
子どもがやっても差し支えがないこと、法に触れたり大けがをしたりする恐れがないことは、できるだけ親と挑戦する機会を作ってあげましょう。
忙しい時はほんの少しだけでも手伝わせると、子どもは満足するものです。
「今日は早くしなくちゃいけないから、あとでゆっくり教えるね」と伝え、余裕があるときに一緒に取り組むのもよいでしょう。
そうすることで自己肯定感を高めることができ、親子の絆を深めることもできます。
子どもに言ってはいけない言葉も、親の態度次第で受け止め方は変わる
今回紹介した「子どもに言ってはいけない言葉」は子どものやる気を削ぎ、自己肯定感を下げる原因になるものです。
ただ中には、言葉自体は悪くないものもありましたね。
先ほど紹介をした「おりこうさん」という言葉は、親が感謝や感激の気持ちを伝えるときには使っても差し支えない表現です。
つまり言葉だけでなく、言葉を伝える状況や親の態度も大切だということを忘れないようにしましょう。
不適切な言葉は言葉そのものが持つ力だけでなく、態度次第で更に悪い方向に働くこともあります。
親が忙しくて子どもを思いやる余裕が持てない、もしくはスマホを見ていて子どもの話を聞いていない時は、口調がキツくなったり素っ気なくなったりします。
例えば言ってはいけない言葉に「もう知らない」というものがありましたが、笑いながら「もう知らないよ~」と言った場合と、素っ気ない態度で「もう知らない」と言った場合では、印象が大きく違うと思いませんか?
後者は大人でも傷つくはずです。
つまり「言ってはいけない言葉」を意識することは大切ですが、その前に親自身が心に余裕を持って子どもに接することを最優先に考えましょう。
子どもに言ってはいけない言葉を理解して愛情を伝えていこう
子どもに言ってはいけない言葉について紹介をしましたが、これら全てを今日から絶対に言わないようにする!というのは難しいかもしれません。
言葉も重要ですが、それよりも大切なのは子どもの存在を受け入れるという気持ちです。
文部科学省による「子どもの意欲やる気等の向上低下に係る調査研究成果事例の収集調査」では、子どもの意欲やる気等を向上させる働きかけの1つとして「他者から受容されることによる安心感」が挙げられています。
2.子どもの意欲やる気等を向上させる働きかけ
ポイント1:他者から受容されることによる安心感
家庭家族の関係においては、親との接触の多い子どもほど、規範感覚が強く、肯定的な自己評価をしている。また、「親が気持ちをわかってくれる」と子どもが認識する場合に無気力傾向は低いなどの傾向が示されている。(中略)
このことから、親や他者に受け入れられているという感覚こそが、子どもの自己受容を促し、肯定的積極的な活動や前向きな考え方を発現させているといえる。
子どもの存在をまるごと受容するという気持ちを持つことにより、使う言葉や言い方も変わってくるはずです。
もし子どもにとってよくない言葉を言った場合は、言い過ぎたことを謝りましょう。
そうすることでお互いの信頼関係も育まれていくことでしょう。
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