まだ反抗期の時期ではないはずなのに、子どもが急に言うことを聞かなくなった、口答えが多くなった、と感じることはありませんか?
思春期の反抗期は13歳前後から始まりますが、その前に「中間反抗期」という反抗期に似た症状が現れることがあります。
文部科学省による「子どもの徳育に関する懇談会」で提示された「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」において、9歳以降の子どもについて言及があります。
9歳以降の小学校高学年の時期には、幼児期を離れ、物事をある程度対象化して認識することができるようになる。
対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追究が可能となる。
自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」)。
「9歳の壁」とは10歳の壁、小4の壁と呼ばれることもある、その名称の通り子どもが成長段階でぶつかりやすい壁のこと。
壁にぶつかる要因については、「学習内容が難しくなる」「自分を客観視できるようになる」の大きく二つのことが当てはまると言われています。
自分を客観視できるようになると、心の葛藤から反抗期のような態度を取るようになるケースがあり、これは「中間反抗期」と呼ばれます。
中間反抗期には個人差もあるのですが、親の普段の態度が反抗を誘発することもあるのです。
今回はこの中間反抗期の特徴と、親ができる対処法について解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
中間反抗期とは9歳の壁とも呼ばれる時期であり、イヤイヤ期の第1次反抗期と思春期の第2次反抗期の間に起きます。
親の言うことを聞かなくなる、なんでも言い返してくる、急に拗ねるなどが特徴です。
中学年になると自分のことを客観視できるようになることが主な原因で、心が成長した証であると言えます。
中間反抗期を乗り越えるためには子どもを肯定する、やってはいけないことをきちんと説明する、一緒に感動体験を重ねることが効果的です。
中間反抗期とは
中間反抗期とは、2歳~3歳で迎える第1次反抗期、13歳前後から徐々に表れる第2次反抗期の間に起こる反抗期のことを指します。
個人差はありますが、中間反抗期を迎える場合、おおよそ9歳頃からその特徴が表れ始めます。
思春期の第2次反抗期よりは穏やかでマイルドな反抗ではあるのですが、今まで素直だった子どもが反抗すると戸惑いますよね。
9歳ごろの中間反抗期の子どもは、以前から児童心理学用語で「ギャングエイジ」とも呼ばれていますので、9歳前後の子どもが反抗的になることはもともと珍しくないことであると言えます。
ギャングエイジとは
小学生になると子どもたちは急速に仲間意識が発達し、今まで以上に友だちとの関わりを求めたり、遊ぶことに喜びを覚えたり、生きがいを求めるようになる。
このグループは家族以上に大きな影響を持つものであり、大人から干渉されない自分たちだけの集団であることを望んでいるとされる。
ただ中間反抗期の原因は、ギャングエイジの原因(仲間意識が発達すること)とは違います。
親が幼児期の延長で、ついつい子どものわがままを許してしまっていた場合にも中間反抗期が起こることがあります。
自分を確立し始めた子どもの意見を受け入れることは大切ではあるのですが、「受け入れる」と「言いなりになる」をはき違えてしまいがちです。
受け入れることと、言いなりになることは違います。
片付けるように言っても聞かない場合に、保護者のかたが黙って代わりに片付けるのではなく、「片付けなさい!」と叱るのでもなく、「自分でできることは自分でしようね」と、はっきりと伝えて子どもの行動に任せましょう。
現在の子との接し方を振り返って早めに対処をすることで改善される可能性が高いですので、普段の接し方についてあらためて考えてみてください。
中間反抗期の子どもはどうなる?3つの特徴
中間反抗期の特徴としては
- 親の言うことを聞かなくなる
- なんでも言い返してくる
- 急に拗ねる
などが挙げられます。
これらは全て子が成長し、自分の意志がはっきりしてきた気持ちの表れです。
これらはなんでも自分で考えて行動したいという気持ちの表れであり、子どもが成長している証です。
この時期の子どもは自分の考えと周りの大人たちの意見が違うと、敏感に反応し自分の意思を貫こうとするので、それが反抗的な態度に見えることがあるのです。
それぞれの特徴について詳しく解説をしていきます。
親の言うことを聞かなくなる
親の言い方を聞かなくなることは、反抗期の代表的な特徴です。
9歳以降になると自分と他人の違いを認識するようになり、自分という人間に対して焦点が当たり始めます。
小さい頃は自分で考える力が弱いため、親と自分の境界線が曖昧であり、親の言うことは自分のことだと捉えて素直に従います。
しかし中間反抗期になると自己の意識が強くなり「(親を含めた)他人」と自分が違うということを自覚し始めます。
なんでも「自分でやりたい」という意識が強まっていき、他人の指示よりも自分の意志を優先させるようになるため、態度が反抗的になります。
そのため親の立場からすると「言うことをきかなくなった!」と感じるようになるのです。
なんでも言い返してくる
小学校中学年になると論理的思考や語彙力、言葉による表現力が発達していきます。
そのため大人が言ったことに対し、口答えや言い訳、屁理屈などを言うようになってくるのも中間反抗期の特徴です。
第1次反抗期、いわゆるイヤイヤ期の時は理由なく嫌がっていたのに対し、中間反抗期では理由を付けたうえで反抗するという点が異なります。
例えば親が「早くご飯を食べなさい」と言うと「ご飯の時間は何時までって決まってない」というように理屈で反抗をするようになります。
今まではごく当たり前のように行っていた会話でも突っかかってきたり、反論したりしますので、どうしても親はイライラしてしまいます。
この年齢になると自分の意識が強くなるというのは先の項目でお話した通りですが、意志が強くなっても、まだ自分の心をうまく言葉で表現することができません。
そのため親に反抗する、言い返すという形でしか意思表示ができないのです。
急に拗ねる
中間反抗期の子どもは理屈を並べたり口答えをしたりしますが、思考はまだまだ未熟であり知らないことも多いですので、大人の正論には勝てません。
すると反抗をしていた時と態度を変え、急に拗ねることがあります。
9歳前後の子ともは視野が広がり、世間が今までと違って見えるようになりますので、周りからストレスを受けていることが多いのです。
しかも子どもが受けるストレスは自意識の発達だけが原因ではありません。
ギャングエイジに差し掛かることにより、友達との関係は強くなりますが、同時にトラブルも起きやすくなります。
日本家政学会の家政学雑誌の記事によると、子どものいじめは小学4年生以降、いじめに限らないトラブルであれば小学3年以降に出現されるとされています。
現在、社会問題化している「いじめ」は小学校4年生(11歳)から中学2年生(15歳)までにほぼ限定される現象(小学校3年生以前のいじめはいたずら、ふざけ、ケンカに近い形の子ども間のトラブルであり、いわゆる「いじめ」とは区別してとらえるべきであろう)であることが、先に指摘したようなギャング・エイジとのかかわりを見いだす一つの論拠となると思われる。
学校での学習内容も中学年以降に難しくなるので、子どもは勉強・対人関係の両方でストレスにさらされている状態であるといえます。
そのため「親に自分の気持ちを最優先にしてほしい」という気持ちが強くなり、親の前では「子ども」の部分の甘えが顔を出すようになるのです。
中間反抗期に親ができる3つの対処法
中間反抗期はその年齢に至るまでの過程が重要です。
まだ低学年の子の場合、今から子どもの接し方について見直しをすることで中間反抗期で起こるトラブルを防ぐことができます。
では既に中間反抗期に差し掛かっている場合はどう対処すればいいのでしょうか?
具体的な方法3つについて解説をしていきます。
- 子どもを肯定する
- やってはいけないことはきちんと説明する
- 一緒に感動体験を重ねる
子どもを肯定する
先ほど解説をした通り、小学校中学年の子どもは自分の意識の変化だけでなく、勉強の内容の難化、友達関係のトラブル等でストレスを溜めやすいです。
成長による個人差が表れ、それを自覚するようになる時期でもあります。
友達と自分を比較し「自分にはこれができない」と考えるようになり、自尊感情の低下による劣等感を抱きやすい時期であることを理解してあげましょう。
身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。
子どもにとって親は安らげる存在でいたいものですよね。
評価や否定をせず「ただあなたの存在が愛おしい」と伝える態度は、子どもの心をあらゆる変化から守ってくれる強い味方になります。
やってはいけないことはきちんと説明する
子どもが反抗的な態度をとったとき、頭ごなしに怒鳴ったり、ガミガミと叱ったりすると、子どもはますます反抗的な態度を強めていきます。
子どもにやってほしくないこと、やってはいけないことは理由を説明することが大切です。
反抗的な態度を取られるとついイライラしてしまいますが、感情は人に伝染するものですので、できるだけ落ち着いて、冷静に理由を説明しましょう。
中には子どもには納得することが難しい理由もあるかもしれません。
しかし冷静に説明することで子どもは少しずつ社会のルールを身につけ、規範意識の基礎が作られていきます。
様々なルールや規範を身につけると、子どもの中で生まれる「○○がほしい」「○○がしたい」というような様々な気持ちを、自分の心の中で理由付けをして対処できるようになっていきます。
一緒に感動体験を重ねる
子どもが成長していくにあたり、柔軟な心を育てる感動体験は非常に重要です。
文部科学省の資料でも、感動体験は自立心や主体性、創造力や協調性などを育てる役目をしていると述べられています。
社会で求められる仲間とのコミュニケーション能力や自立心、主体性、協調性、チャレンジ精神、責任感、創造力、異なる他者と協働する能力等を育むためには、様々な体験活動が不可欠です。
その時間を親子で共有することにより、お互いへの理解が強まり、絆が深まっていきます。
感動体験を通し子どものことをより理解できれば、口出しする回数が減り子どもへのストレスが減っていきます。
「感動体験」といっても大それたことをする必要はありません。
例えば一緒に映画を観たり、キレイな景色を観たりなど、ごくありふれた事で構いません。
日常の中の些細なことでも子どもにとっては感動体験になります。
中間反抗期は成長のチャンス!親子で乗り越えていこう
中間反抗期を乗り越えていくためには、まずは親の意識を変えることが大切です。
子どもが言うことを聞かない、何を言っても言い返してくるなど、毎日そのような事が続くとついイライラしてしまい「辛い」という気持ちが先行してしまうと思います。
しかし中間反抗期は悪いものでは決して無く、心が成長するチャンスでもあります。
子どもが成長している証ですので、まずは前向きに捉えることです。
そして幼児から大人になろうとしていく姿を支援していこう、という姿勢が重要です。
子どもの心の変化や意志を尊重して一緒に日常を楽しむとともに、ダメなことには一貫した体動を見せましょう。
既に中間反抗期が始まっていても、今回の対処法を実践することで態度に変化が表れるはずです。
おおらかな気持ちで子どもに接していきましょう。
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