子どもの反抗期は、2歳頃の第一反抗期、小学校高学年~中学生頃の第二反抗期の2回あるとされています。
しかし対象でない年齢にも関わらず子どもが反抗的で困る、という悩みを抱えている方も多いです。
子どもはなぜ親の言うことを聞かなくなるのでしょうか。
子どもの心の中には一体どのような思いがあるのか、気になりますね。
今は昔に比べ、勤労時間の増加や共働き家庭の増加により、父親・母親共に平日に子どもと触れ合う時間が減少傾向にあります。
平日に親が子どもと接する時間の割合
母親と子どもと接する時間が減り、父親と子どもの接する時間は、「ほとんどない」という割合が増加
子と親が触れ合える時間が減りつつある今、親が何に気をつければいいのかについて考えていきましょう。
このページの要点をざっくりいうと
小学校低学年の子どもが反抗的になる理由として、親の言動に一貫性がなく、子どもとの約束を軽視することが挙げられます。
親は子どもを一人の人間として尊重し、約束を守ること、感情的に叱らないこと、親の考えを押し付けないことを心がける必要があります。
また親の愛情が伝わっていない子どもは問題行動を取りやすいという研究結果もあります。
他の子と比べずに自分の子どもの意見に耳を傾け、信頼関係を築いていくことが不可欠です。
なぜ子どもが言うことを聞かなくなるのか
子どもが言うことを聞かないのには、きちんとした理由があります。
その理由として親が約束を守らないこと、ルールに一貫性がないことが挙げられます。
親が約束を軽視している
慌ただしいときに子どもから話しかけられると「あとでね」と言ってしまいがちです。
後で聞けば問題はないですが、気が付けば忘れているという事はないでしょうか。
大人にとっては些細なことかもしれませんが、後から話を聞いてもらえると思っていた子どもからすれば立派な約束です。
「お母さんやお父さんも約束を守らない」と親を信頼しなくなり、子ども自身も約束を軽視するようになっていきます。
親が約束を守れないのですから、子どもも言うことを聞かないのは仕方がないことです。
鳴門教育大学が行った親子の信頼関係の尺度を開発するための研究において、
- 親から見守られていると実感している子
- 自分のために時間を割いてくれると感じる子
- 家族のために頑張ってくれていると感じている子
は、親に信頼を抱いている子が多いという結果が出ています。
「見守られ」因子や「自己受容」因子にみられるように、ありのままの自分が親によって受容され、いつでも見守られているという確信が、親への信頼につながるようである。
子どもは私たちが思っている以上に親の行動をよく見ていて、自分のために時間を割いてくれているか、自分を見守っているか、自分をひとりの人間として尊重しているか等を感じ取っています。
親が子の言っていることを蔑ろにすると子は親を信頼できず、言うことを聞かなくなります。
一貫性がない
家族の間で何か約束事がある場合、皆で必ず守っているでしょうか。
場合によっては黙認して叱らなかったり、逆に感情的に叱ったりという事はないでしょうか。
その時々で言うことが変わると、子どもでなくても混乱し、不信感を抱きます。
先述の鳴門教育大学が行った研究においても、親が「感情的になりやすい」「自分の間違いを認めない」「意見を押し付けられたと感じたことがある」と感じている子どもは、親への信頼度が低いという事が分かっています。
本研究の「親の感情抑制」因子と「信頼承認」、「困難時の支援」との間に有意な負の相関がみられた。(中略)
親が感情を抑え理性的な態度であればあるほど「信頼承認」「困難時の支援」の尺度と高い正の相関があることを意味している。
ある決まり事に関して、親の都合で怒ったり黙認したりしていると、子どもは物事本来の善悪ではなく人を見て行動を変え、気分で言うことを聞いたり聞かなかったりするようになります。
子どもが言うことを聞かないときの5つの対処法
それでは子どもが言うことを聞かないとき、実際にどのような行動を取ればいいのでしょう。
対処法として挙げられるのは以下の5つです。
その場しのぎの発言をしない
子どもに言うことを聞かせるため、その場しのぎの発言をする事はよくありません。
例えば買い物に行って子どもがおもちゃを欲しがった時に「後で買ってあげるから」となだめ、結局約束を守らない、というような状況です。
親にとっては些細なことでも、約束を守らないことで子どもからの信頼度は大きく下がります。
子どもから信頼される親になるためには、その場しのぎの発言は絶対にしないことです。
ただこのような「その場しのぎの発言」をする状況というのは、ある程度切羽詰まっている時、時間に余裕がない時が大半だと思います。
そのためあらかじめ自分で親としてのルールを決めておくと、いざという時にスムーズに対応ができます。
おもちゃの例であれば「○円までなら月に一個までなら買ってあげる、○円以上のものは誕生日やクリスマスに買う」というような具合です。
ひとりの人間として尊重する
子どもと公園等に行く約束をしていたにも関わらず、当日になって面倒になり「今日は無理」と言ってしまった経験はないでしょうか。
もし約束をしていた相手が他人の大人だった場合、どうしても当日に行けない場合は理由を説明し、誠実に謝罪をするはずです。
小学生の子どもでも、大人と同じ一人の人間であることに変わりはありませんので、大人同士と同じように誠実に向き合うことを心がけましょう。
子どもとの約束を守ることは確かに大切ですが,状況によってそれが難しいこともあるでしょう。
そのような時はきちんと理由を説明して謝りましょう。
また臨床育児・保育研究会代表の汐見稔幸氏は、子どもをひとりの人間として見ることにより、主体性が育ち、社会的ルールも理解できるようになると述べています。
子どもを人間として見るということは、 子どもには、大人と変わらないその子どもなりの感情、気持ち、心の世界があって、それをできるだけ丁寧に聞き取り、できるだけ満たすという形で対応することによって、段々と自分が何をしたらいいのかを子どもが自分で分かってくる。
社会的ルールも分かってくる。
子どもをひとりの人間として敬うことによって社会的ルールが分かる、すなわち善悪の判断も付けられるようになるため、親がやっては駄目だということを理解できるようにもなるのです。
親の考えを押し付けない
「なぜ子どもが言うことを聞かなくなるのか」でも解説をした通り、「意見を押し付けられたと感じたことがある」と思っている子どもは親への信頼感が低いです。
低学年の子どもは親から見ると未熟に感じられ、自分では何も判断ができないように見えます。
しかし入学前に保育園や幼稚園などで集団生活を送った子であれば、自我がある程度は育っていて、物事を色々と考える力もついています。
文部科学省の「子どもの徳育に関する懇談会」の資料にも、低学年の時期の子どもは言語能力や認識力が高まり、大人の助言のもと善悪の判断ができるということが述べられています。
小学校低学年の時期の子どもは、幼児期の特徴を残しながらも、「大人が『いけない』と言うことは、してはならない」といったように、大人の言うことを守る中で、善悪についての理解と判断ができるようになる。
また、言語能力や認識力も高まり、自然等への関心が増える時期である。
小学校低学年の子どもは語彙力が少ないため、自分の意見を言葉にできないことも多いです。
しかし親が子どもの考えを聞こうとすれば、その気持ちが子どもに伝わります。
子どもの気持ちを読み取ろうとする姿勢をみせることで信頼関係を築くことができます。
感情的に叱らない
先の項目で「大人の助言のもと善悪の判断ができる」と述べましたが、あくまでも大人の助言があってこそですので、低学年の子どもは自力では完全に善悪の判断ができません。
しかも小学生は好奇心が非常に旺盛なため、悪いことをしてしまう事もあります。
悪いことをすれば当然叱らなくてはいけませんが、その叱り方にも注意が必要です。
頭ごなしにダメだと伝えたり、突き放したような言い方をするといい影響を与えません。
感情的になることで信頼度が下がるだけでなく、子どもの脳に「怒られて嫌だった」という記憶だけが鮮烈に残り、なぜ悪いのかという理由を理解できないままになる恐れがあります。
なぜ駄目なのか、なぜいけないことなのかを丁寧に説明をすることで、同じ過ちを繰り返さなくなります。
子どもに丁寧な説明をするよう心がけようにすると、親側も感情的にならず、冷静さを維持しながら叱ることができるというメリットがあります。
他人と比べない
誰かと比べられて嫌な思いをしたことがある人は大人にも多いはずです。
それでも身近に優れた子がいるとつい「○○くんはあんなにいい子なのに」と比べてしまう事があるかもしれません。
ですが人生経験が少ない子どもにとっては、誰かと比べられることは自尊心が傷つくだけでなく、自信を大きく失う原因になります。
「自分なんかダメな子なんだ」と自信を失った子どもは、物事に対する意欲を失い、自分から様々なことに取り組まなくなります。
親に愛されているという自信も持てなくなるため、子どもはより反抗的になります。
関西女子短期大学が幼児の反抗的な行動と母親の子どもに対する愛着の関係性について調査を行ったところ、問題行動を起こす子どもは母親の愛着を求めている傾向が強いということが分かっています。
子どもの問題行動は母親の子どもへの愛着と関係しており、子どもは自分の心理状況を問題行動として表出し、母親の愛着を求めているといえる。
引用元:関西女子短期大学紀要「子どもの問題行動と母親の愛着との関連性、並びに子どもの問題行動に対する母親評価と保育士評価の相違性について」
誰かと比べることをせず子どものありのままを好きでいてあげることが、反抗的な態度を改善する糸口になるはずです。
言うことを聞かない子どもの「心の声」を聞こう!
親が子どものことを大切に思っていても、それが子どもに伝わっていないと、親の言うことを聞かず反抗的な態度をとる子どもになりやすいです。
言うことを聞かないからといって感情的になったり、厳しくしつけようとすると、さらに親子の溝を深めてしまう恐れがあります。
先述の関西女子短期大学の研究結果の通り、問題行動を起こすということは「親の愛情がほしい、愛情を感じたい」というサインです。
子どもの心の声を聞き、一人の人間として尊重して大切にしているということを子どもに伝えてあげましょう。
そして自分で自分を大切にできる「心の体力」を今から少しずつ身につけさせてあげましょう。
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