働いている母親に対し、年配の方の中には「母親は家にいるべきだ」と言ってくる人がいますが、専業主婦が当たり前なのはもう昔の話です。
今はもう共働きの夫婦のほうが多い時代になり、出産後も夫婦共に働くことがスタンダードになりつつあります。
実際に文部科学省が平成28年度に行った調査によると、夫婦の就業状況は片働きよりも10%高いという結果が出ています。
夫婦の就業状況では、「共働き」が「片働き」よりも10ポイント以上高くなっている。
引用元:文部科学省委託調査「平成28年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究~家庭教育支援の充実のための実態等把握調査研究~」
昔に比べると会社における女性の待遇がよくなったこと、育休などの法律が整備されたことにより出産後も働く女性が増えました。
しかし出産後も働くことにより、子どもとの時間が少なくなるのは事実です。
いくら共働きが当たり前になりつつあっても、共働きであることが子どもにどのような影響を与えるのか心配になりますよね。
今回はその影響と、働く母親が子どもにできることについて解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
今は専業主婦よりも共働きの家庭のほうが多くなっています。
夫婦が共働きであることは、子どもにとって進学率が上がる、親が忙しいことで思いやりが育つ、目標に向かって努力する姿が学べるなどのメリットがあります。
母親が働いていると一緒に過ごす時間は少なくなりますが、だからこそ休日は家族で楽しく過ごすこと、子どもの前で前向きな姿勢を向けることが大切です。
父親の協力も仰ぎ、家族で団結して過ごしていくことを心がけましょう。
共働きが子どもに与える影響とは
ひと昔前までは共働きは子どもによくない、さみしい思いをさせると主張する人も多く居ました。
しかし共働きであることは、子どもにとってよい影響を与えることが分かってきています。
子どもの進学率が上がる
内閣府が行った調査において、両親の年収別での進学状況を見ると、年収が高いほど大学への進学率が高いことが分かっています。
高校生の進路決定は、学力だけでなく世帯の経済力に規定されることが多くの研究から示されている
大学への進学率は世帯所得に比例して上昇するが、対照的に専門学校への進学や就職は下降している。
また進学先としては、低所得世帯の子どもほど専門学校を選択している様子がうかがえる。
共働きの家庭はそうでない家庭に比べ、年収が高い傾向があります。
経済的に余裕があれば子どもの教育にお金をかけることができますので、当然進学率は上がっていきます。
また大学へ進学をさせるためには、学費は避けて通れない問題ですね。
大学の4年間の学費平均は国立でも245万円、私立理系であれば539万円、医歯薬系は2337万円となっており、学費以外に下宿代や交通費もかかります。
大学の4年間の学費平均は【国立】242万円【公立】254万円【私立文系】396万円【私立理系】539万円【私立医歯系】2337万円(平成29年度文部科学省調査より)となっています。
経済的な余裕があれば早い段階から大学進学を視野に入れ、それに向けて教育を行えますので、親子共に進学への意欲が上がり学力も向上します。
思いやりが育つ
共働きで親が疲れていたり大変そうにしていたりすると、子どもはそれを感じ取ります。
実際に手伝いをしてくれる子や、親に「大丈夫?」と声をかけてくれる子もいるのではないでしょうか。
親が共働きの場合、家族という小さな社会の中で、疲れている人を気遣うという思いやりを学べます。
もちろん子どもの性格によっては、親に対してはっきりとした気遣いをしない子もいますね。
しかしそのような子どもでも「親が忙しい」ということを理解し、それを意識した上で行動をするようになります。
短い時間で自分の感情をどう伝えるか、用事をどう伝えるか、話しかける時に辛そうにしていないかなど、相手の状況に応じた行動を無意識のうちに身につけていきます。
相手への配慮を学ぶことは、これから成人して社会に出ていく時に非常に大切なスキルの一つです。
目的に向かって努力する大切さを学ぶ
仕事をしている親は忙しく、仕事以外に割ける時間が少ないですね。
時間が少ない分、必要な家事をいかに効率的に行うか、限られた時間をどのように使うかなど、日常的な課題を工夫しながらクリアしている方が多いのではないでしょうか。
子どももその様子を見て「時間には限りがある」という考えが生まれるようになり、勉強や遊びに関する時間を意識して機敏に動くようになります。
また両親が精力的に仕事や家のことに取り組む様子も、子どもによい影響を与えます。
毎日をなんとなく過ごすのではなく、目標を持って機敏かつ活発に動く様子は、子どもにとってよいお手本になります。
毎日の生活が充実したものになるのはもちろんのこと、子どもが何か困難にぶつかった時も親の姿が大きな励みになります。
共働き家庭で子どもにいい影響を与える3つの方法
上記で共働きの家庭のメリットを紹介しましたが、だからといって他の事に気を遣わなくていいという訳ではありません。
共働きでない人よりも子どもとの時間が短いのは事実ですので、それを意識した上での行動も必要です。
そこで共働き家庭で子どもにいい影響を与える、3つの具体的な方法について紹介をしていきます。
- 父親と協力して家庭を運営する
- 休日は家族で楽しく過ごす
- 前向きな姿勢を見せる
父親と協力して家庭を運営する
子どもがのびのび育つ過程で、父親の影響力は大きいものです。
ダイナミックな遊びは男性にしかできませんし、社会に出ることの厳しさや自立することの重要さなどを教えることもできます。
また父親が子どもと積極的に対話を行うことは、子どもの社会性やコミュニケーション能力を高めるために効果的であることが、兵庫教育大学の調査研究で明らかになっています。
子どもの社会性に対して直接的な影響を与えていたのは父親関与に対する子どもの認知と母親の肯定的な養育態度であり、父親自身の子どもへの関わり認知は有意な影響を及ぼしていなかった。(中略)
つまり、子どもの社会性は子どもが父親に積極的に関わってもらっていると感じている子どもにおいて高く、そのような子どもの認知は父親自身の子ども関与によって支えられていることが示された。
着目したいのは、子どもが「父親が積極的に関わっている」と感じているかどうかが重要だということです。
子どもからの父親への印象も確認した上で、より積極的に関わっていくことが大切です。
母親にとっても、父親と家事を分担することで精神的・心身的に負担が軽減されます。
これからは男性も家事をやる時代であり、今の子どもが大人になる頃には男性はもっと家事に携わっているはずです。
特に男の子の場合、男性の家事協力の大切さを見せることも将来に役立ちます。
休日は家族で楽しく過す
家族と過ごす時間で大切なのは、長さよりもその内容です。
休日はぜひ家族で楽しい時間を過ごしましょう。
疲れていて外に出かけるのが辛い、という場合は家の中で一緒にテレビゲームをしたり、トランプやちょっとしたテーブルゲームをするのもいいと思います。
「ゲームは子どものためにならない」と思う方もいるかもしれませんが、家族がみんなで楽しめるということが重要です。
休日というものは平日に一生懸命働いているからこそ嬉しいものであり、平日に時間がとれないからこそ休日を楽しみに一週間を過ごすことができます。
子どもと「日曜日は一緒に遊ぼうね、楽しみだね」というように休日を楽しみにする気持ちを共有し、平日を一緒に乗り越える意識ができると、家族間の絆はより強固になり、休日に濃い時間を過ごすことができます。
前向きな姿勢を見せる
共働きをする理由は人によって違います。
仕事を続けたくて働いている人、家計の事情で働いている人など様々です。
本当は働きたくないという気持ちを抱えストレスを溜めている方もいるのではないでしょうか。
仕事が全て順調に進めばよいのですが、実際には失敗やトラブルなどもあり、心に余裕がなくなることもあるはずです。
しかし子どもの前ではそこから這い上がる過程を見せることも、子どもにとっての学びになります。
また子どもの前で「誰かに対する嫌悪を示す」「ささいなことでかっとなる」等、不快感を与える表現をすると、子どもの自己コントロール力が下がり、イライラ・嫌悪などの否定的な気持ちが起きやすいということも研究で明らかになっています。
「自己中心的で不快感を与える情動表現スタイル」得点の高い母親の子どもは自己コントロール得点が低いことが明らかになった。
加えて、「自己中心的で不快感を与える情動表現スタイル」得点の高い母親の子どもは否定的情動の生じやすさ得点が高いことが示された。
日々が辛い方は、子どものためにまず自分を労わりましょう。
前向きな日々を過ごせるよう、子どもとの楽しい時間を少しずつ積み重ねていってください。
共働きは子どもにいい影響と学びをもたらす
「共働きは子どもによくない!」という意見は、大半が日本人の古くからの固定概念から派生した考えで、根拠がないものが大半です。
今は共働きの母親のほうが多いですし、共働きによるメリットはたくさんあります。
また子どもと過ごす時間が長ければ長いほどよいという訳でもなく、長くてもいい加減な時間を過ごしていては意味がありません。
重要なのは、現在の環境からどのように幸せを見出していくかです。
忙しい共働きだからこそ、一家が団結するチャンス。
思いやりを持って行動すること、それぞれの役目をこなすことが子どもの人生において大きな学びになることでしょう。
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