子どもはなかなかじっとしていられないものです。
子どもに勉強をやらせても、すぐに違うことを始めたり椅子から降りたりするのを見て「集中力がないな」と思うことはありませんか?
小学生はなぜ集中力が続かないのでしょう。
集中力とは、一つのことに注意を向ける力のことです。
子どもが勉強をする際に集中力が持続せず、注意力が散漫になってしまう理由にはどのような事が挙げられるのでしょうか。
自分の子どもに集中力があるのかどうか、判別する基準についても気になりますね。
集中力がない小学生の特徴や、実際に集中力がない子どもにどのような対策を取ればよいのかについて解説をしていきます。
このページの要点をざっくりいうと
子どもが物事に集中できない原因として、そもそも子どもは集中できる時間がかなり短いこと、睡眠時間が短いことが挙げられます。
子どもの集中力を養うには、規則正しい生活をして睡眠を十分にとること、周辺に勉強する科目以外のものを置かないようにすることが大切です。
そして長い時間勉強をするよりも時間を短く区切ったほうが効果的ですので、15分程度に区切り、「集中できた」という成功体験を積み重ねていきましょう。
小学生に集中力がない理由
まずは小学生に集中力がない理由について解説をしていきます。
小学生は大人が思う以上に集中力がないこと、また社会の変化により子どもの生活が変化していることが原因として挙げられます。
小学生の集中力はそもそも短い
子どもの集中力は短く、15分程度であると言われています。
幼児~小学校低学年の子の場合、せいぜい年齢+1分が集中できる時間だという意見も見られます。
個人差があるのではっきりとは定義できませんが、小学生が集中できる時間はかなり短いです。
小学校の授業は一単位が45分であることが一般的ですので、それくらいなら集中できるはず、と考えてしまいがちですが、実際は小学生が45分間ずっと集中することはできません。
文部科学省が発表した調査結果では、15分ごとに学習時間を区切って授業を行うことが、子どもの学力向上に効果的につながった取り組みであると紹介されています。
○15分×3のモジュール学習「集中タイム」の導入
平成19年度全国学力・学習状況調査の結果においては,平均正答率が全国平均を下回るなど課題がみられたことから,授業改善の方策として「モジュール学習」を導入し,児童の基礎的・基本的な知識・技能の定着を図った。(中略)(集中タイムに取り組んだ児童の感想)
・ みんなで声を合わせて読むのが楽しい。(音読)
・ 一文一文はっきり読め,リズムを合わせて速く読めるようになった。(音読)
・ 記録(速さ,丁寧さ)が高まっていくと楽しい。(書く活動)
子どもがずっと机に向かっていると「集中している」と思ってしまいがちです。
しかし大人とは違い、机に向かっている=物事に集中しているとは限りません。
子どもに勉強や工作に取り組ませて何分間作業を行うかよく観察をすることにより、実際に子どもがどれくらい集中できるのか、それとも他のことに気が散っているのかが確認できます。
睡眠時間が足りていない
共働き家庭の増加、子どもの習い事の増加などが原因で、子どもの就寝時間はどの年代でも遅くなっています。
財団法人日本小児保健協会が実施した調査によると、「夜10時以降に就寝する子ども」の割合は、1歳6ヶ月・2歳・3歳で半数を超えており、子どもの生活時間の夜型化の実態が明らかになってきました。
これは10年20年前に比べて、顕著に増加しています。
また小・中・高校と学年が進むにつれて就床時刻が遅くなること、睡眠時間が少なくなり「睡眠不足を感じている児童生徒」の割合が増加していることなどが示されています。
また就寝前にテレビやゲーム、インターネットなどを行う子どもが増えていることも要因です。
寝る直前に明るい画面の光を目に入れると、寝床に入る時間が早くてもすぐに寝付くことができないため、睡眠不足に陥ります。
午後10時以降に起きていると回答した385人のうち、もっとも多かったのがテレビ(33.8%)、これにインターネット(18.4%)、ゲーム(12.2%)、勉強(7.8%)、家族との会話(7.3%)と続く。
睡眠不足が原因で集中ができなくても、子ども本人は「睡眠時間が足りない」ということが自分では分かりません。
そのため親が具体的な対策を取れないまま、だんだんと授業についていけなくなったり、体調不良に繋がったりします。
集中力がない小学生の特徴とは?
自分の子どもには集中力があるのかどうか、気になりますね。
集中力がない子どもの特徴としては、物事が中途半端になってしまう、机が散らかっていることが挙げられます。
そのことで余計に集中力が伸びなくなる悪循環に陥る恐れがあります。
何をやるにも中途半端
集中力がないと、何かを行っている途中に他のものに意識が向かいます。
すると一つのことを完結する前に次のことに手を付けてしまいます。
物事が中途半端だと、その時は楽しいという気持ちになるのですが、物事をやり遂げる達成感を味わうことができません。
8歳未満の子どもがある程度の負荷があるイベントについて達成感を味わうと、その物事に対する成果だけでなく、社会性や主体性が強化されて情緒が安定することが小児看護の研究で明らかになっています。
幼児が達成感を得られるとそのイベントに関する成果が得られるだけでなく、社会性、主体性が強化され、情緒が安定するという帰結が導かれた。
達成感を味わうことは子どもの情緒や主体性を伸ばす要素であり、これは集中力を伸ばす上でも非常に重要な要素です。
達成感を得る機会が少ないと集中力も伸びにくいということが言えます。
机の上や周りが散らかっている
集中力がないと好奇心の対象が次々と移っていきます。
すると机の上が散らかり、整理整頓が追い付かなくなります。
例えば漢字練習をやっていた子どもが色えんぴつでお絵かきを始め、その後で折り紙を始めた場合、机の上はどのような状態になるでしょうか。
漢字ノートと筆記用具、色鉛筆と紙、折り紙が机の上に出た状態になります。
子どもの多くは自分から片付けができません。
実際にTSSテレビ新広島が行ったアンケートによると、片付けができる子どもは26%前後だという結果が出ています。
片付けが「できる」お子さんがいる人は26%。74%の人が「できない」を選ぶ結果となりました。お子さんの年齢別に見ると、小学校中学年・高学年がどちらも80%を超える高い割合となっています。
つまり親が何も言わなければ、机の上や周辺は飽きたものでいっぱいになっていくということです。
それを視界に入れることでさらに注意力散漫になり、集中力が続かなくなるという悪循環に陥ります。
集中力がない小学生へ3つの対処法
それでは集中力がない子どもに対し、具体的にどのような対応をすればいいのでしょう。
具体的な対処法は以下の3つです。
生活習慣を整える
整った生活習慣は集中力を養うのに不可欠です。
まずは食事を3回、きちんと食べましょう。
学校で授業に集中するためには朝食が不可欠です。
実際に大学生を対象にした調査でも、朝食を摂取しなかった学生は摂取した学生よりもイライラが強く、集中力に欠けていたことが分かっています。
朝食を摂取していない学生は、摂取している学生に比べて「やる気に関する因子」の得点が低い傾向が認められた。
また,朝食を摂取していない学生は、摂取している学生に比べて「精神状態の安定に関する因子」の因子得点が有意に高く、いらいら感が強く集中力に欠けていることがわかった。
また、睡眠不足は集中力がなくなる大きな要因の一つです。
睡眠時間の理想は低学年であれば10時間、高学年であれば8時間程度が目安と言われていますので、就寝時間・起床時間を決め、睡眠時間を確保しましょう。
できるだけ一日のスケジュールをはっきり決めてルーティン化するようにすると、子どもは次の行動が予測しやすくなり、安定した心で過ごせるようになります。
心が安定することで目の前のことに集中しやすくもなります。
環境を整える
幼児~低学年の子どもの多くは、勉強よりも遊ぶことのほうがはるかに大好きです。
そのため視界に入る場所にマンガやゲームなどがあれば、すぐそちらに気を取られ夢中になります。
「集中力がない小学生の特徴とは?」の項目でも紹介した通り、自分で片付けができる子どもは少ないですので、まずは親が協力して環境作りをしてあげることが大切です。
勉強に関係がないものを置かないことはもちろんのこと、勉強する科目以外のものも置かないことが理想です。
他の科目の教科書が視界に入っただけでつい読んでしまう、という子もいます。
もちろん集中力には個人差があるため、全員がそうだとは限りません。
実際に子どもが勉強している様子を観察したり、子どもと話し合ったりして「これなら集中できる」という環境を作っていくことが大切です。
小さな達成目標を一緒に積み重ねる
株式会社ベネッセコーポレーションが行った「勉強時間による学習の定着・集中力に関する実証実験」によると、長時間勉強をするよりも15分×3回=45分で休憩をはさみながら勉強する短時間学習の積み上げの方が学習に効果的であるということが分かっています。
「15分×3 (計45分)学習」グループは休憩を挟むことでガンマ波のパワーが回復。学習時間を通して集中力は一定のレベルを維持
短い時間の学習のあとに休憩・リフレッシュを挟むことで集中力を維持している時間を増やし、少ない学習時間でも同等以上の点数を出すことが出来たと考えられる。
引用元:PRTIMES「学習時間を細かく分けた「45分」で「60分」と同等以上の学習効果を発揮 “長時間学習”よりも短時間集中の“積み上げ型学習”が有効であった」
子どもには長い時間勉強してほしいと思っている方が多いと思いますが、短い時間で区切って休憩を挟んだほうが効率がいいということです。
それをふまえ、まずは短い時間で区切って机に座らせましょう。
最初は15分間ずっと勉強をし続けているのは難しいですので、15分間座っていられたら褒めるようにするなど、小さな目標から達成していきましょう。
15分が難しいようであれば、10分でも構いません。
小さな成功体験を積み重ね、親が褒めてあげることで、子どもの集中力が少しずつ養われます
まとめ
子どもは非常に好奇心が旺盛です。
大人が気にならないようなちょっとしたことでも「あれは何だろう?」と気になってしまい、興味を示します。
しかし集中しやすい環境を作ったり、短く時間を区切ることを意識したりなど、親の行動次第で集中力を持続させることができます。
子どもは集中できる時間が本当に短いですので、思わず「あなたは集中力がない」と言いたくなることもありますが、そうすると集中力を養うチャンスが得られず、ますます注意力散漫になります。
まずは子どもと同じ目線で物事を見てみることが大切です。
そして短い時間でも「集中できた!」という成功体験を積ませること、物事に熱中する楽しさを味わわせることを心がけましょう。
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